晴天・無風の日中とは別に、未明、雷が鳴ったという。カミサンはそれで目が覚めた。私は、なにか2階で音がする――そんな程度で眠り続けた。朝、庭に出たら地面がぬれている。小名浜や山田町では降水量ゼロだから、局地的な雷雨だったようだ。
朝から動き回った。午後もカミサンの用事で車を運転した。鹿島街道で用をすませたあとは、同じ道を戻りたくないので、海岸道路を利用した。
すると、カミサンが思い出したようにいう。「豊間の『ほうせん』に寄って」。津波被害に遭いながらも、長屋門・母屋が残った。母屋をカフェと和服や裂(きれ)を扱う店に改装した。もとは造り酒屋だ。「豊仙」という酒を造っていた。「ほうせん」はそれに由来するのだろう。
その家の庭に立っていると、上空をモーターパラグライダーが旋回した。「かもめの視線」の空撮家酒井英治さんにちがいない。あとで薄磯海岸へ寄ると、酒井さんが低空飛行をして、着地するところだった=写真。
彼の空撮写真を10枚ほど、いわき地域学會が発行した『いわきの地誌』の口絵にお借りした。好間のV字谷や震災前と後の沿岸部の様子などが一目でわかる。今までにない「空からの視線」を取り入れることができた。
この7年間、フェイスブックにアップされる酒井さんの空撮写真で沿岸部の変化を逐一見てきた。それに刺激されて実際に沿岸部へ出かけ、変化の激しさを確かめる、といったことを繰り返している。
エンジンとプロペラを背負って歩く酒井さんはしんどそうだった。聞けば重さが40キロ以上ある。
「持ち上げてみてください」というので、「えい」とやったが、少し浮いた程度だった。カミサンは、なんとこれを持ち上げた。「さすが米屋さん」と酒井さん。空中では重さを感じないとはいえ、地上では体力がいる。夏のような日の夕暮れ近く、薄磯海岸で空を飛ぶことの大変さ、それゆえのすばらしさを少しわかった気がした。
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