2020年6月4日木曜日

ごはん粒を運ぶアリ

 日曜日(5月31日)――。夏井川渓谷の隠居で昼食をとっていると、体長1センチほどの大きなアリが1匹、座卓(こたつ)に現れた。カミサンが気まぐれにごはん粒を置くと、間髪を入れずにかぶりつく。おい、どうした、腹ペコなのか!
 ごはん粒だから重いはずはない。4粒をあごで持ち上げたのはいいが、どうもしっくりこないらしい。いったん離して1粒だけにし、あごでちぎり始める。最初は半分、さらにそれを一回り小さくして、仁丹くらいの大きさになったのを、くわえて運び始めた。

 どこへ持って行くのか、見届けてやれ――。デジカメを手に、動きを追う。堂々巡りが続く。こたつの上を動き回り、こたつカバーの方へ下りたと思ったら、またこたつの上に戻る。そのあと再びカバーの方へ下り、また上り、また下り=写真上1、を繰り返しながら、ようやく畳の上に出た。
 それからはジグザグを続けながらも、床の間の方に向かっていく。どこかにすき間があるのかと思ったが、それらしいものはない。そのうち床柱を上り始めた。ん、なんで“木登り”するの? 柱を上ること180センチ余り。障子戸の上にある長押(なげし)=写真上2=の裏側に、ためらうことなく入って行った。

この間ざっと15分。1匹のアリの道行きなのに、ずいぶん時間がかかるものだと知る。

家に帰ったあと、撮影データとネットの情報を照らし合わせながら、アリの種類を絞り込む。クロオオアリ、クロヤマアリ、ムネアカオオアリ……。絞り切れない。が、体長・体色・習性から、ムネアカオオアリではないか、というところに落ち着く。

ムネアカオオアリは森林性で、木材の腐朽部に営巣する、行列はつくらない、という。実際、1匹で行動していた。大きなアリで、背中(胸部)にえんじ色のような赤みがある。地中ではなく、長押に消えた。そういったことも“決め手”になった。

「ファーブルみたい」。アリを追跡していると、カミサンがあきれるように言った。が、年を取って、時間ができて、カネがないのだから、「ファーブル」をやるのはいいヒマつぶし、いや勉強になる。自然をよく知るには、目の前の“教材”をおろそかにしないことだ。

「ファーブル」をやる、いいかえれば自然をよく観察する、ということでいえば、ムネアカオオアリの習性が気になる。長押の裏側に営巣するほどの腐朽部があるかどうか、一度確かめないといけない。

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