夏井川渓谷の隠居は、庭が二段になっている。石垣の下に広がる庭は年2回、人に頼んで草を刈っていたが、1回だけにしたらたちまちヨシ原に変わった。今年(2020年)もヨシが1.5メートルほどにのびてきた。
ヨシは地下茎で増える。下の庭の西端にフキが自生する。そのフキもヨシに飲み込まれつつある。これでは春先にフキノトウを採る楽しみがなくなる。おととい(6月6日)、知り合いの元林業女子に頼んでヨシを刈ってもらった=写真上1。
下の庭は東西が約30メートル、南北が約10メートルある。家なら3軒は建つほど広い。それを覆っているヨシを、朝から午後2時過ぎまで1人で刈り続けた。カミサンが「終わったら家に寄って」と念を押したが、午後2時半過ぎにかかってきた電話の声は酸欠状態だった。「疲れたので家に帰ります」
きのうの日曜日、下の庭を見て、この広さだもの、一日がかりの重労働になるわな、「疲れた」というはずだ――彼女のがんばりにあらためて敬服し、感謝の念がわいてきた。
自生するフキの西側、隣地との境にヒノキが植わってある。カエデもわきから生え出て大きく太くなった。その枝葉が茂って、上下の庭を行き来する通路(隠居が建つ前は県道と直結した畑道だったらしい)を覆っている。かがまないと通れない。ヨシが刈られてせいせいしたのに背中を押され、腕を伸ばせる範囲で枝葉を切り落とした。
今度は頭上を気にしないで通れるようになった=写真上2。それだけではない。夏はちょっとした緑陰コーナーになる。樹下にいすを持ち出して休むのもいい。ただし、ブユやアブがやってくるから、蚊取り線香ないし虫よけスプレーは欠かせないが。
カエデにまじってヤマグワが枝を伸ばしていた。赤と黒紫の実がいっぱいなっている=写真上3。童謡「赤とんぼ」の「山の畑の、桑(くわ)の実を、小籠(こかご)に、つんだは、まぼろしか。」を思い出しながら、黒い実を1粒だけ食べた。さっぱりした甘さだ。これをいっぱい食べると、舌が「ぶんず色」(黒みがかった紫紺色)になる。
山里で暮らす楽しみは――マムシやスズメバチなどの怖い生き物もいるが、山菜・キノコ・木の実といった季節の食材が豊富なことだ(野生のキノコはまだ食べることも、売ることもできない)。それをあらためて確認する一日になった。
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