細かく刻む。何に盛ろうか。てのひらにちょこんと載るくらいの量だから、小皿でいい。手に入れたばかりの「アマビエ小皿」がある。作者は近所に住む陶芸家・箱崎りえさん。その小皿に盛って、焼酎を注いだおちょこをそばに置くと、いい感じだ=写真。
おちょこは、大学生の“孫”の親にもらった。台湾みやげで、焼酎を入れると底のニシキゴイ(と最初は思ったが、ヒレの具合からするとサメ?)が泳ぎ出すように感じる。これで毎晩、グイッとやってはコップの水を流し込む。
ミョウガタケの糠漬けはいいあんばいだった。口に入れてかむと、ミョウガ独特の風味が立つ。糠床の滋味もしみこんでいる。
池波正太郎の『鬼平犯科帳』には季節の食べ物が出てくる。そのひとつ、長谷川平蔵の好む春の食べ物に「独活(うど)の糠漬け」がある。それを食べたくて何度かつくってみたが、味がしみこむまでにはいかなかった。今思えば、漬けたりなかったようだ。1週間くらい漬け込むくらいでないとだめなのかもしれない。ミョウガタケは、その反省から少し時間をかけてみたのだった。
ミョウガタケの糠漬けはガバガバ食べるようなものではない。刻んで小さい錠剤のようになったかけらをかみしめる。そうして食べていると、小皿のアマビエが見えてくる。白と赤の“ニシキザメ(二色鮫)”とアマビエが踊りだすころ、定量の焼酎が尽きる。
緊急事態宣言が解除されたといっても、「3密」まで解消されたわけではない。1世紀前のスペインインフルエンザ(スペイン風邪)と同じく、必ず第2波、第3波がくる。以前より家にいる時間が増えたからには、巣ごもりを楽しむなにかを考えねば――。
ひとつは糠漬けだ。野生の独活はもう硬くなっているから、栽培ものでどうしたらうまく食べられるか、試してみよう。漬けたことのない野菜も入れてみよう。これだってコロナ禍がもたらした“新しい生活様式”だ。
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