半そで・半ズボンで茶の間にいる。扇風機は上半身に風を送っても、座卓の下までは涼しくしてくれない。
あぐらをかいていると、すねに、太腿にまとわりつくものがいる。ハエだ。「五月蠅い」と書いて「うるさい」と読む。5月だけでなく、8月もうるさくてかなわなかった。9月もしばらくはそうだろう。
汗ばんだ人間の体だけでなく、食事時には食べ物にもたかる。茶の間ではハエたたきが欠かせない。
夏井川渓谷の隠居には、平地と違った虫が現れる。台所に「ハエ取り紙」をつるしたら、アブが何匹もかかった。ハエは2、3匹しかいなかった。
坪庭にはミソハギが咲いている=写真。小さなハチやハナアブがやって来ては蜜を吸っている。
その花を見ながら、ここでカミサンがキイロスズメバチに刺され、痛みと腫れが引かないので、車で磐城共立病院(現いわき市医療センター)へ駆けこんだことを思い出した。
同時に、最近読んだばかりの本でハチも刺すのは雌だけと知って、「蚊と同じではないか」と驚いたことも。
著者の名字が変わっている。円満字(えんまんじ)二郎。筆名でもなんでもない、本名だ。フリーの編集者兼ライターで、出版社に勤めていたころは高校の国語教科書や漢和辞典などの編集に携わったという。
毎月、マチの書店から岩波書店のPR誌「図書」が届く。そこにしばらく、著者が「漢字の動物園in広辞苑」を連載した。
それが『漢字の動物苑――鳥・虫・けものと季節のうつろい』(岩波書店、2023年)と題する単行本になった。ある意味では、岩波のPR誌らしく『広辞苑』を宣伝するものだ。
辞書は「読む」か、「引く」か。高専に入って間もなく、担任の英語教師から「読むものだ」と教わったのを思い出す。
移動図書館から借りた「漢字の動物苑」をパラパラやっていたときだった。「ハチのミツの甘い味わい」の項で、ハチに関する広辞苑の説明を紹介していた。
そこに「雌は産卵管を毒針としても使う」とあった。前述したように、ハチで刺すのは雌だと了解した。
念のためにネットで確認すると、刺すのは雌だけ、働きバチはすべて雌、雄は女王蜂と交尾するだけに生まれた存在、といったことが出ていた。
蚊も吸血するのは雌だけ。これはだいぶ前、やはり動物に関する本を読んでいて、半分驚きながら知ったことだ。産卵する(子孫を残す)ためには栄養が要る。それで雌は血を吸う、ともあった。
雌が刺す。蚊とハチのほかにはないものか。そんなことを思いめぐらしているうちに、足にハエがまとわりつき出し、手の甲をピシャリとやったら、蚊がつぶれて赤い血が広がった。
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