週の半ばになると、豆腐の移動販売車がやって来た。運転手兼販売員のおばさんが「こんちわー」と店(米屋)の戸を開ける。その都度、カミサンが「豆腐3丁、油揚げ2枚」と応じる。豆腐は好間の自営業者がつくった。
茶の間にいる私にも週1回のルーティンは体にしみつき、カミサンがいないときには、私が豆腐3丁と油揚げ2枚を注文した。
だから、近所のスーパーへ買い物に行っても、豆腐をカゴに入れた記憶はない。油揚げもそうだ。
その移動販売がなくなってからだいぶたつ。おばさんが免許の更新を機に、運転をやめた。高齢ドライバーの交通事故がたびたび報じられている。それも理由のひとつだったろう。
納豆も月に1回、ボランティア団体から届いた。障がいがあっても明るく元気に暮らしていける地域社会づくりを――と、市民団体が結成された。そのいわき方部の活動資金に充てるため、値段は少し高いが宮城県のメーカーの納豆を販売してきた。
方部長がわが家に何軒かの分を持って来たのを、あとでカミサンがそれぞれの家に配る(アッシー君を頼まれる)。取りに来る人もいる。
活動を始めてからすでに40年を超えた。その納豆も、団体の活動終了に併せて届かなくなった。
以来、買い出しをするたびに、カミサンが豆腐と油揚げ、納豆を見比べながらカゴに入れる。ある意味では「新しい習慣」だ。
夏井川渓谷の隠居へ出かけた日曜日、たまに小野町や平田村まで足をのばす。コロナ禍の3年間で覚えた言葉に「マイクロツーリズム」がある。地場の野菜を中心にした「買い物ドライブ」を、今風に横文字でいうとそうなる。
その延長で思い出したのが、ふるさとの阿武隈高地で売っている「三角油揚げ」だ。前にこんなことを書いた。
――田村市常葉町の実家へ帰ったら、帰りに三角油揚げをもらった。同じ町内の豆腐店でつくっているという。
三春町では、この油揚げに切れ込みを入れてネギなどを差し込み、焙烙(ほうろく)で焼いて、みそをつけて食べるのが好まれている。
三春と同じ田村地方のわがふるさとと、その東隣の都路町にも三角油揚げをつくる豆腐店があることを知った――。
先日、カミサンがマチから田村市の「自慢の逸品」を網羅したパンフレットを持ち帰った。なかにふるさとの精肉店の「牛めんちカツ」や、都路町の「豆腐」が紹介されていた=写真。
ネットでチェックすると、豆腐店に記憶があった。三角油揚げをつくっている。国道288号沿いにある同町の商業施設にも卸しているという。
そうか、毎週買いに行くのは無理でも、そちらへ出かけたときには、立ち寄って三角油揚げと豆腐を買うことはできる。
その意味では、阿武隈の山里の、普通の豆腐店や精肉店を頭に入れておくと、たまに敢行するマイクロツーリズムがより楽しいものになる、はずだ。
0 件のコメント:
コメントを投稿