2020年4月2日木曜日

「今年一番のカツオです」

 日曜日(3月29日)の宵に息子一家が顔を出した。ちょうどカツオの刺し身で晩酌を始めたところだった。「刺し身、どうだ」。間もなく中学1年生になる上の孫に勧めると、ためらわずに一切れを口にした。醤油の小皿にはおろしにんにくとわさびがたっぷり入っている。にんにくに顔をしかめるかと思ったら、「うまい!」とうなった。
 毎週日曜日、マイ皿を持って孫が通う小学校の近くの魚屋へ、刺し身を買いに行く。今年(2020年)は、2月最後の日曜日からカツ刺しが続いている(カツオがある限りはカツ刺しにする)。なかでも29日の刺し身は、若ダンナが「今年一番のカツオです」と胸を張るほどイキがよかった。

 にんにくとわさびにまみれた一切れを口にする。かむとすぐ、天然の甘みと旨みが口腔に広がる。嚥下したあとも旨みが残る。旨みの余韻――そんな言葉が脳内に浮かんだ。

上の孫に続いて、下の孫、親たちも一切れを口にした。「うまい!」。だれもが「旨みの余韻」にひたった。草野心平なら、こういうときには「幸福」に「口福」の字を当てるだろう。

 日常レベルの庶民の「幸福」は食欲に直結している。フェイスブックには、食べ物の写真がこれでもかこれでもかとアップされる。私もそれは同じ。毎週、なんという刺し身を食べた、味はどうだった、といった「週記」を手元に残す。いちいちブログには上げない。が、今回のカツ刺しは特別だった。

 上の孫が最初にカツ刺しを食べて「うまい!」とうなったのは、小4のときだ。日曜日、たまたま晩酌の時間に来て、カツ刺しをつついた。にんにくとわさびも平気だった。去年も、3月末の日曜日にやって来て、下の孫と競うようにカツ刺しを食べた。

 いわきの港への水揚げは晩春から初夏になるが、食生活の面では春先からカツオが市中に出回る。それなりの、ときには今度のような絶品のカツ刺しが早い時期から食べられる。

 いわき市議会は今年2月、議員提案で、毎月7日を「魚食の日」とする魚食推進条例を可決した。毎年3月7日には、市・事業者・市民が協力して魚食の日にふさわしい取り組みをすることも決まった。第1回の3月7日には、スーパーなどで割引販売などが行われたという。

 わが家では7日にいっぺん、毎週日曜日が魚食(刺し身)の日。孫と一緒にカツ刺しで酒が飲めるまであと8~10年。それができるかどうかはともかく、うまいカツ刺しを提供してくれる魚屋があることを、孫たちは脳裏に刻んだにちがいない。

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