2020年4月27日月曜日

谷間を渡る薫風・上

 まだ4月だが、夏井川渓谷の森は木の芽が吹いてパステルカラーをまとい、尾根筋までヤマザクラの花で染まっている=写真下(小川町・江田地内)。きのう(4月26日)は朝から晴れて、谷間を薫風が吹き渡った。
 渓谷の隠居で午前中、土いじりをした。この半月の間にネギ苗約250本とキュウリ苗3株を植えた。スペースはまだある。まずは鷹の爪。これは漬物の風味・殺菌用に欠かせない。毎年栽培している。それからナス、あるいはなにか、サニーレタスでもカブでもかまわない。すぐ種をまいたり、ポット苗を植えつけたりできるように、うねをつくっておく――。

若いときは土を耕すのに鍬(くわ)を使った。50代後半からはスコップに替わった。60代になると、それさえきつくなった。

家庭菜園用の耕耘機を買うほどのスペースではない。が、もっと簡単に土おこしをしたい。生協のカタログに、てこの原理を利用した5枚刃の「畑おこすべ~」があった。竹馬とフォークを合体させたようなもので、握りその他はアルミ製、5本ある刃は鉄製で焼きが入っている。値段も手ごろなので、ためらわずに買った。

足で刃を踏んで地中に差し込み、握りをグイッと下げる。雑草の根ごと土が盛り上がる。とはいえ、疊3枚分を耕すのに2時間もかかった。気づけば、正午近くになっていた。

昼食は縁側に出てとった。薫風が体を包む。早緑(さみどり)色、臙脂(えんじ)色、黄色、薄茶色……隠居の対岸の森は木の芽が吹いて、ぽやぽやした産毛をまとったようにやさしい。アカヤシオ(岩ツツジ)の花が散ると始まる緑のグラデーション。コロナを忘れてしばし眼福に浸った。

午後も「畑おこすべ~」を使おう、と思ったが、「年寄り半日仕事」とはよく言ったもので、体が「うん」といわない。昼寝をしたあとは、カメラを首から提げて近所をぶらついた。
 夕方4時過ぎには平地へ戻った。田んぼはあらかた耕起が終わった。水を引いた田もある。平・上平窪地内に入ると、トラクターが往復する田んぼの奥に、こいのぼりがはためいていた=写真上。

いわき地方では大型連休に入ると、一気に田植えが始まる。その準備が進められている。アマはアマなりに菜園の土をほぐし、プロの農家は田んぼをならして水を入れるばかりにする。自然と向き合った、コロナとは無縁の営み。里の田園にも薫風が吹き渡っていたことだろう。

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