2020年4月19日日曜日

ふき味噌とさんしょう味噌

 この時期、「ふき味噌」と「さんしょう味噌」=写真下=が晩酌に欠かせない。ごはんのおかずにもなる。ときどき、どちらかをなめながら風味を楽しむ。
カミサンが、近所の伯父(故人)の家の庭からフキノトウを摘んで、ふき味噌にした。さんしょう味噌は、自分の家の庭にあるサンショウの木の芽を摘んで、カミサンに頼んでつくってもらった。

フキノトウは、小さいころは苦くて食べられなかった。苦みも食味のひとつ、と感じられるようになったのは、職に就いてからだ。

 今でもはっきり覚えている。新米記者の取材先に草野美術ホールがあった。事務所で酒盛りが始まり、アルミホイルに包んで、ストーブで蒸したフキノトウを食べたら、意外や意外、舌が受け入れた。苦いが、酒に合う。以来、春にはフキノトウを食べる習慣ができた。

 家によっては、フキノトウを刻んですりつぶし、味噌を加えて生のまま食べる。が、阿武隈高地では油で炒める。砂糖も加える。そうして、マイルドなふき味噌ができあがる。わが家のふき味噌は後者の“甘苦(あまにが)”だ。

 さんしょう味噌は、独身時代、世話になった家でおばさんが生(な)りたての、小さな青い実をすりつぶしているのを見て知った。春の木の芽でもできる。

夏井川渓谷の隠居にサンショウがある。晩秋、黒く熟した実の赤い殻を摘んですりつぶし、粉ざんしょうにした。うな重が高騰した今は、粉ざんしょうはつくらない。晩春、糠床にサンショウの木の芽を入れる。ほのかな風味付けになる。サンショウは葉も実も殻も利用できる。
 実は、さんしょう味噌には伏線があった。田村市からネギ苗をもらってきて、隠居の庭の畑に植え付けた。ところが、この冬は寒気が緩み、たまに寒暖が激しくなって、苗に花芽がいくつもできた。それを摘んだ=写真上1。この花芽を利用して「ねぎ味噌」にしよう、いやこれだけでは香りが薄い、サンショウの木の芽を加えよう、と思いついた。

ネギの香りはゼロだった。未熟な花芽ではしかたがない。サンショウも香りを楽しむには量が少なかった。「今度は木の芽をもっと使おう」。カミサンもやる気になってきた。

子どもには、フキノトウの苦みもサンショウの木の芽の香りも刺激が強すぎる。親と同じ食べものを口にして、「苦い!」「鼻がツンとする!」となると、もう手が出ない。しかし、味蕾には苦み・香りが刷り込まれる。その後、いろいろ経験を積んで大人になると、なぜか子どものころ嫌った苦み・香りに懐かしさを覚える。山菜の苦さ・香りを受け入れるには人生の苦さが必要なのだ。

きょう(4月19日)は夏井川渓谷の隠居へ行って、コゴミ(クサソテツ)を探そう。庭のフキノトウはもう薹(とう)が立った。シダレザクラの樹下にはアミガサタケが出ているかもしれない。できるだけ動かずに春の味を調達する。
畑の隅ではこぼれ種から芽生えた「ふっつぇ」の辛み大根が花盛りだ=写真上2。種は去年までのがいっぱい残っている。今年(2020年)はサラダ感覚で花を食べてみようか。カツオの刺し身のつまにして。

人間と人間との接触の代わりに、人間と自然との接触を増やす。これが籠り居の日々のストレス解消になる。

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