2016年4月2日土曜日

インコのことば

 地震で「全壊」の判定を受けた。たまたま自宅の近くに借り上げ住宅(アパート)が見つかった。アパートの前に市内循環バスの停留所がある。イトーヨーカドー平店に交流スペース「ぶらっと」があったころ、バスを利用してよく通った――。カミサンの実家の近くに住むおばあさんの述懐だ。
 住む場所は変わっても同じ隣組に属している。その点は安心だろう。でも、坐骨神経痛が高じて外出がままならなくなった。無聊を慰めるためにセキセイインコを飼った=写真。ガラス戸越しに見ると、スズメがたびたび現れてはえさをついばんでいる。「スズメにもえさをやってるの。毎朝、えさを待ってるんだよ」
 
 インコは、私が訪ねたときにはカゴの中にいた。部屋に放すこともあるらしい。しばらくたってから、「よいしょ、よいしょ」とインコがつぶやいた。飼い主の口癖をまねたのだろう。インコはそうすることで飼い主とコミュニケーションをとっている。訪ねたときには、インコ用にツルツルの生地の服を着ていた。脚が引っ掛からないようにしているのだという。
 
 半月ほど前、「シジュウカラには単語と単語をつないで文をつくる能力がある」という研究成果が発表された。「ピーツピ」=周囲を警戒、「ヂヂヂヂ」=接近、「ピーツピ・ヂヂヂヂ」=周囲を警戒+接近と、状況に応じて鳴き声を変える。「ヂヂヂヂ・ピーツピ」と語順を変えて聞かせたら、無反応だった。

 ふだんは「チュンチュン」鳴くスズメも、猫が現れると「ジュクジュク」の警戒音に変わる。そういう例はあるが、単語と単語をつないで複雑なコミュニケーションを図るところまではいっていない。今のところそれができるのはヒトとシジュウカラだけだそうだ。
 
 前に、作家の小川洋子さんと科学者の岡ノ谷一夫さんの対談本、『言葉の誕生を科学する』(河出書房新社)を読んだ。岡ノ谷さんは、ヒトの言葉も小鳥のようなものから進化してきたのではないかという。言語の「歌起源」説だ。そして「ある時『歌』から『言葉』へと、大いなるジャンプをなしとげた」という。
 
 オウムやインコはヒトのことばを話すといっても、シジュウカラのように言語の組み立てをするわけではない。が、ヒトを喜ばせる能力は持っている。「インコを置いて泊まりには行けなくなった」とおばあさん。インコに「よいしょ」されて、「シジュウカラの言語能力」や「言語の歌起源説」にまで思いが及んだ。

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