いわきの、特に沿岸部の人間には5年前の3・11が地獄だった。が、内陸部の人間には、1カ月後の4・11(翌12日も含めて震度6弱の、巨大余震2連発)が恐ろしかった。きのう(4月11日)、3・11から5年1カ月と、4・11から5年の日が重なった。4・11、4・12は、揺れが直下から、いきなりきた。
当時の状況を知ってもらうために、2011年4月12日の拙ブログを再掲する。4月9日に勿来地区災害ボランティアセンターがオープンした。その翌々日だった。
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照島はいわき市泉町下川字大畑地内の海岸から約250メートル沖合にある。ウ(鵜)の生息地として国の天然記念物に指定されている。知人からケータイで撮った照島のかたちを見せられて、うめいた。「ソフト帽(台形)」が「とんがり帽子(三角形)」に変わっていた。
「3・11」から1カ月。4月11日朝、海岸線に沿って勿来地区災害ボランティアセンターへ出かけた。国道6号常磐バイパスならチョク(直)で行けるが、海岸を通って照島をこの目で確かめたかったのだ。
ところどころ波打ち、亀裂が入り、段差の多い「海岸道路」を南下する。豊間を、江名を、永崎を、小名浜を過ぎる。半月前に通ったときと比べて、道路沿いの光景はそう変わっていない。そんな印象を受けた。が、よく見ると道端にがれきが集約されつつある。少しずつ復旧への歩みは進んでいるのだ。
小名浜を過ぎて高台の大畑に至り、いわきサンマリーナへと下る。閉鎖中のマリーナの入り口から、ちょっと沖にある照島を見て息をのんだ。「とんがり帽子」どころではない。海面から突き出た「竜の爪」のようだ。知人がケータイで撮った場所とは違うのだろう。高台に戻り、ゴルフ場のあるホテルへと移動すると、「とんがり帽子」が見えてきた。
「竜の爪」はしかし、「3・11」で一気にできたのではあるまい。すでに少しずつ崩落が進んでいた。『いわき市の文化財』(いわき市教育委員会発行)にも、近年崖が崩れて小さくなっていく傾向がある、とある。そこへ「3・11」が起きた。
方角からいえば、「とんがり帽子」は北から、「竜の爪」は北東から照島を見たときのかたちだ。『いわき市の文化財』には断崖の頂上にウがびっしり羽を休め、そこから逆三角状に生えたトベラなどの植物が見える。添付された写真は北から見た照島。知人のケータイ写真もほぼ同じところから撮っている。
「とんがり帽子」にも、「竜の爪」にも緑はない。丸裸だ。初めて外気にさらされた赤ちゃんのように、岩肌は赤みがかっている。
「とんがり帽子」には、ウは12羽しかいなかった。「竜の爪」を見ると、10羽。もっとも、照島はウの「生息地」というより「越冬地」だ。多くは春が来て北へ帰ったのだろう。――と、これは11日朝の感慨。午後2時46分には、家で1分間の黙祷をした。
その2時間半後。夕方5時16分にまた、でかいのがきた。震度6弱。「3・11」並みだ。外へ飛び出した。しかも、今度は揺れているうちに停電した=写真(雨で路面が濡れている、店は停電で暗い)。折から雷雨が暴れていた。「地震・雷・火事・津波、そして原発」。バキッ、バキッ。少し先で火花を散らす落雷を初めて見た。本などが少し落下した。照島はさらに崩落したか。
カミサンはすぐ、風呂に水を貯めた。正解だった。電気はおよそ1時間後に復旧したが、水はその前に再度止まった。いつまで神様は試練を与え続けるのだろう。
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それから2日後のブログの抄録。
「3・11」以来となる震度6弱の強い余震が、4月11日午後5時16分ごろと翌12日午後2時7分ごろ、いわき市を襲った。11日は即停電したものの、およそ1時間後に明かりが戻った。12日は大丈夫だった。
11日、水道は浴槽に水を貯めることはできたが、間もなく断水した。あの日からちょうど1カ月で再び振り出しに戻った。12日、平市街に用があって出かけたら、水道局本庁舎で人がひっきりなしに水をくんでいた。不安がまた広がる。
飲料水だけではない。余震では、いわき市田人(たびと)町石住地内で土砂崩れが発生し、道沿いの民家2棟がつぶれ、3人が死亡、3人がけがをした。命まで襲いにきた。(注・もう1人、車で通行中の中通りの青年が亡くなった)
現場は、鮫川渓谷を走る「御斉所街道」(県道いわき石川線)沿いの石住小中学校近く。V字谷だから民家の裏山は険しい。
ニュース写真を見る限り、一帯は杉山だ。崩落地はたぶん伐採跡。その中央付近から土砂が崩れ落ちた。ジグザグに筋が入っているのは伐採時の作業道跡だろう。石住の前の川を渡ると戸草川溪谷。そこへ毎年春、通った。なじみの場所でもある。
(注・田人の断層の直近に家があった知人によると)「魔物」(地震)が自宅のすぐわきを通り抜け、そのまま一直線に土砂崩れのあった石住へと抜けていった。隣家は庭の真ん中を地震が駆け抜けたために家が弓なりに曲がってしまった。その写真がすごい。庭から家の下へと地面がえぐられていた。
長期断水を覚悟した水道だが、思ったより早く復旧した。近所にある平六小の水道は健在(というより、非常用地下貯水槽が設けられている)で、13日早朝、ポリタンクに飲料水を入れて帰宅したら、家の水道も「細いけど出るようになった」とカミサン。断水はわずか一日半で済んだ。
浴槽に貯めた水は、スイッチを入れて「あつめ」のボタンを押したら、沸いた。断水したら、水は張ってあっても風呂はたけない――と思い込んでいたが、たけるのだ。
水甕にしなくてすんだので、2日ぶりに風呂に入る。が、のんびりはしていられない。浴槽につかっているときにドドドッときたら、たまらない。カラスの行水にとどめた。
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いわき市は来月(5月)、巨大余震を引き起こした田人の「井戸沢断層」(正断層)を天然記念物に指定すると、きのう、テレビが伝えていた(3月末に市文化財保護審議会が答申した)。
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