例年なら、夏井川渓谷では4月にアカヤシオ(方言・イワツツジ)の花が咲き、新緑に包まれる5月初旬、急斜面にシロヤシオ(ゴヨウツツジ=方言・マツハダドウダン)の花が咲く。アカヤシオもシロヤシオも、主として県道小野四倉線の対岸に分布する。
シロヤシオは毎年咲くとは限らない。咲いても数が少ない年がある。去年(2015年)はほとんど花が見られなかった。
今年のアカヤシオは、4月でも早いうちに開花した。いつもは木の芽が吹く前に咲くが、木の芽も同時に吹いた。すると、シロヤシオも咲けば早いだろう、去年は咲かなかったから今年は咲くはずだ、咲いているかもしれないぞ――。きのう(4月24日)、そんなことを思いながら渓谷の隠居へ着くと、シロヤシオの点描画が展開していた。例年より1週間余り早い。
シロヤシオと開花時を同じくするツツジにトウゴクミツバツツジ(紅紫色)、ヤマツツジ(朱色)がある。白い棒アイスのようなウワミズザクラも前後して咲く。ともに咲きだしていた。
「マイ・シロヤシオ」がある。行楽客には木々の緑に遮られて見えないだけだが、むろん県道から気づく人はいる。全体を見るにはガードレールをまたぎ、谷へと下って行かないといけない。足場はよくない。
岸辺の岩盤に根を張り、天に向かって伸びた幹から枝葉が川になだれるように垂れている=写真。そう、花のかたまりは白いドレスのようだ。
このシロヤシオの木に気づいたのは震災後だった。県道をぶらぶら歩いているうちに、木の間越しに白のかたまりが見えた。一本の木の花の数としては溪谷随一ではないか。今年も笹竹の茎につかまりながら谷へ下り、ひとり、対岸のシロヤシオの花を見た。心が洗われた。
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