2016年4月21日木曜日

モグラ塚

 平地の“路線商店街”に住んでいる。旧平市の近郊農村で、戦後、ベッドタウンとして開発が進められた。畑は残っているが、家並みにさえぎられて見えない。3・11後は、さらに畑が減った。
 それで、畑や休耕地をすみかにしていたモグラが土中のトンネルを伝って逃げ込んできたのだろうか。隣家との間に奥の家も利用する通路がある。通りから通路へ折れるあたり、側溝ふたのわきにモグラ塚ができた。3軒の家の車が出入りするから、塚はすぐつぶれた。移り住んで三十数年、初めてのできごとだ。

 後日、そこから奥へ直線で7メートルほど、さらに直角に曲がって5メートルほどのわが家の庭に、モグラ塚ができた=写真。

 夏井川渓谷の隠居では、モグラは庭の同居人といってよい。5年半前にこんなことがあった(ブログの内容をざっとなぞる)。

 庭のテーブルで休んでいたら、足元を動く黒いかたまりがいた。頭胴長およそ7センチ。頭をもさもさしながら、コケのあいだにできたジグザグ道を行ったり来たりしている。テーブルの脚の底にもぐりこんだと思ったら、とがった肉色の鼻をひくひくさせては、出たり入ったりしている。

 モグラが地表すれすれのところにトンネルをつくると、土が割れて盛り上がる。野菜の根が宙に浮き、枯れることがある。モグラは畑の邪魔者だ。が、地上でうごめく姿はおどおど、びくびくしていて、絶えずベンチの脚の底から出たり入ったりしている。カメラのシャッター音にも驚いて脚の底に引っこむ。

 モグラは、そんなに地下深くはトンネルを掘らないはずだ。ミミズや幼虫を主なえさにしているからには、地表に近いところに“回廊”がある。その回廊はしかし、かなり広範囲に及ぶらしい。通路も庭も土中にはトンネル網が広がっている?
 
 3・11後の印象だが、カラスが路線商店街に増えた。イノシシは、すでに住宅のある丘陵地で昼間も目撃されるようになった。それに加えてモグラ塚だ。イノシシについては理由がはっきりしている。猟をする人が減った。モグラについては――やはり、畑に囲まれて家があったのが、家に囲まれて畑があるように変わった、そんな自然環境の変化が影響しているのか。

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