2019年2月4日月曜日

沼に半分沈んだ乗用車

 きのう(2月3日)午後遅く、アッシー君をして中之作の「つるし雛飾りまつり」を見たあと、新舞子の海岸道路を利用して帰った。
8年前、大津波が押し寄せたとき、海岸の黒松林は後背地の家や田畑を守る“クッション”になった。が、代償も大きかった。地中にしみこんだ塩分を根が吸い上げ、浸透圧によって松が脱水症状を起こした。やがて、遠目にも茶髪が増え、密林が疎林に変わった。

そのなかを、右手に太平洋を望みながら、といいたいところだが、まばらになった松と高くなった海岸堤防にさえぎられながら進む。左手に藤間沼が見えるとすぐ、カミサンが叫んだ。「沼に大きなものがある! 止めて、とめて」。大きな水鳥? チラ見したときには、カモはいなかったはずだが。

南と北の沼を分ける堤付近でUターンする。と、沼の真ん中付近に、フロントガラスから上だけを出して乗用車が沈んでいた=写真。

大津波のあと、いわきの海岸部で日常ではありえない景色をたくさん見た。波打ち際でひっくり返っている軽自動車、砂浜にあらかた埋まった車、ペシャンコになった車……。フラッシュバックとまではいかないが、それらの記憶がよみがえる、超現実的光景だ。

道路から沼にせり出したスペースがある。何台か車が止められる。岸辺には若い黒松が並んでいた。ストリートビューで確かめると、十数本あるうち葉をつけているのは4本。あらかたは立ち枯れている。そこに立入禁止を示す福島県警の黄色いテープが張られていた。

「沼に半分沈んだ乗用車」から、ハリウッド映画のようなカーアクションを想像することは簡単だ。海岸道路を疾走していた車がなにかのはずみで車道を逸脱し、岸辺の立ち枯れ松を折りながら宙を飛んで、沼の真ん中に、しかもこちらに向きをかえて着水した――。

しかし、事実は小説より奇なりで、第三者がいくら想像をたくましくしても、事故の実際はわからない。きのうの新聞にもけさの新聞にも、記事はなかった。けがをしたとしても軽傷だったのだろう。

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