2019年2月12日火曜日

小豆の行く道・来る道

 いわき昔野菜保存会主催のいわき昔野菜フェスティバルがおととい(2月10日)、中央台公民館で開かれた。
 メーンの座談会=写真上=にしぼって書く。いわきの在来小豆に「むすめきたか」がある。茨城県常陸太田市では同じ在来小豆の「むすめきた」(「「か」はない)が栽培されている。「きたか」と「きた」を介した地域文化の交流を目的に、フロアも交えて語り合った。

コーディネーターの江頭宏昌山形大教授によると、「きた」は「きたか」より少し大きいが、ともに白い縞がある。「きたか」は6月上旬に種をまき、10月末には収穫が始まる。「きた」はやや遅い6月下旬~7月あたまにまいて、11月あたまに収穫する。豆の形質や栽培特性は同じ範疇に入るという。

いわきでは、遠野町で「いわき遠野らぱん」が「きたか」を原料に水ようかんを開発、新商品として売り出す段取りになっている。社長の平子(たいらこ)佳廣さんが明かした。品物も提供し、参加者が試食した=写真下。さっぱりした味だった。
常陸太田には、いわき昔野菜保存会と同じような目的を持つ「種継人(たねつぎびと)の会」がある。地元の和菓子屋・パン屋・ケーキ屋・カフェなどと連携して契約栽培を広め、新しい商品開発などが進んでいる。

「種継人の会」代表布施大樹さんは常陸太田の北部、福島県矢祭町と接する山間地に住む。同地域には福島県から嫁に来た女性が多いという。いわきの三和や川前、田人といった山間地と地域環境が似ているようだ。

川を軸にした人・モノの往来だけでなく、山間地には山間地同士の横のつながりがある。フェスティバルのあとの懇親会では、布施さんに同行した常陸太田の北山弘長さんとそのことに関連して語り合った。布施さんらは久慈川の支流・里川流域で暮らしている。いわきに当てはめれば、夏井川の支流・好間川流域といったところだろうか。

いわきの三和町で栽培されている「むすめきたか」が、山里のつながりのなかで常陸太田まで伝わったのかもしれない――そんなことが想定できる。

 私のなかでは、「きたか」と「きた」は2年前、在来種の豆を調べている長谷川清美さん(神奈川)から連絡が入ったときにつながった。昔野菜保存会の仲間の案内で長谷川さんが三和町の生産者を取材するのに同行した。そして今回、「きた」の地元で「きた」の栽培を続けている生産者と話をして、推測の確度が上がった。

 江頭さんの話では、常陸太田には「むすめきた」のほかに、黒い小豆の「むすめきたか」がある。横からいきなりパンチを食らったような衝撃が走った。種は人をつなぎ、人は人とつながる――ある意味、スリリングでロマンあふれるフェスティバルになった。

0 件のコメント: