午後には、70~75歳未満の運転免許更新に必要な「高齢者講習」が待っている。前半の戦いを終えたところで帰宅すると、カミサンが出かける準備をして待っていた。「暮らしの伝承郷で『いわきの郷土料理』展が始まったから行こう」
いわき地域学會が、市の委託を受けて市内の伝統郷土食を調査し、平成7(1995)年3月に報告書をまとめた。調査リーダーはハマの江名で生まれ育った故佐藤孝徳さん。私は校正を担当した。
それから15年後の平成22(2010)年、市が昔野菜(在来作物)の発掘調査事業を始めた。27年度までの6年間に発掘・調査と展示、実証圃(ほ)での栽培、フェスティバルの開催、冊子の発刊などを実施した。これにも冊子の巻頭言を書くなどして間接的にかかわった。
初年度に原発震災が発生した。「今、記録しておかないと」。受託したいわきリエゾンオフィス企業組合のスタッフが市内を駆けずり回って、さまざまな昔野菜を発掘した。伝承郷とのコラボも進み、園内の畑で「小白井(おじろい)きゅうり」などが栽培されている。
「いわきの郷土料理」展は、そうした先行調査の知見と栽培の経験を踏まえて企画されたものだろう。時間的にはせわしいが、機会をのがすといつ行けるかわからない。カミサンのいうとおりに車を出した。
写真展示だが、見ればやはり発見がある。いわきのハマを代表する夏の料理といえば、カツオの刺し身と焼きびたし。この二つが真っ先に展示されている。刺し身はもちろん、醤油とおろしにんにくで。焼きびたしは、昔、食用油をそんなに使えなかったから、焼いてたれに漬けたのだという。ほかにも『伝統郷土食』や『昔野菜図譜』でなじみの食材と料理の写真が並ぶ。
かんぴょうにするユウガオは、機械にかけて外側から削るとばかり思っていたが、薄く輪切りにして内側から外へと手がんなで削っていく。大量に商品を製造するわけではない。手仕事が基本の「自産自消」ではその方が楽なのだろう。
小白井きゅうりは、皮をむいてどぶ漬け(関西では糠味噌漬けのことをいうが、福島県では塩水に漬けることをいう)にする。
この企画展は前日の土曜日、開幕した。きのうはその関連行事として、「野菜の収穫体験」が予定されていたが、あいにくの雨だ。伝承郷のスタッフが代わりに、小白井きゅうり=写真=その他を収穫して持ってきてくれた。
朝から動き回り、座学と実地講習に疲れて帰ると、またカミサンが街へ行きたいという。ならば、帰りは魚屋へ直行だ。「きょうのカツオは今年(2019年)一番の味です、福島県沖で獲れました」。一群がようやく北上してきた。食卓にはこれにもう一品、小白井きゅうりのもみ漬けが加わった。
確かに、カツオの刺し身はうまかった。さっぱりした甘みが口中に広がり、後々まで旨みが残った。それと前後して、やわらかくてシャキシャキしたきゅうりもみを楽しんだ。家を出たり入ったりすること4回。さすがに困憊気味で晩酌を始めたから、カツオも小白井きゅうりもうまさが倍加した。
「いわきの郷土料理」展は9月29日まで。「野菜の収穫体験」(観覧料が必要)は7月21、28日、8月4、11日と、いずれも日曜日午前10時から正午まで行われる。8月14日の月遅れ盆には、いわきの伝統芸能・じゃんがら念仏踊りの唄にも出てくる「十六ささげのよごしとなす汁の振る舞い」が予定されている。
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