2019年7月24日水曜日

緑の文化財

 いわき地域学會の第348回市民講座が土曜日(7月20日)午後2時から、いわき市文化センターで開かれた。樹木医で同會幹事の木田都城子さんが「人と地域と文化財」と題して話した=写真下。
 主に、天然記念物について解説した。動物、植物、地質鉱物など、それぞれに指定基準がある。最近、拙ブログで「川前のカツラ」について書いたので、緑の文化財=植物の指定基準に興味を持った。

第一に、「名木、巨樹、老樹、畸形木、栽培植物の原木、並木、社叢(しゃそう)」。次に、「代表的原始林、稀有の森林植物相」。ほかに10項目の基準項目が並ぶ。川前のカツラはこの「巨樹」に該当する。が、いまだに無指定なのはなぜか。

 国の天然記念物に指定されているいわき市の植物は、「中釜戸のシダレモミジ」(渡辺町=昭和12年)と、「沢尻の大ヒノキ(サワラ)」(川前町、昭和49年)だ。

沢尻のサワラは、樹高が約34メートル、目通り幹回りが9.5メートル。日本最大のサワラで、それ自体森のような巨樹である。樹下に立つと、たちまち巨樹の存在感、生命力、霊性に包まれ、心が浄化される。推定樹齢800年。前にも書いたが、なにか思い屈するものがあるとき、会いに行くと木霊(こだま)に慰撫される。元気がよみがえる。

川前のカツラは、このサワラよりはスケールが小さいが、巨樹としての風格は十分備えている。国指定天然記念物の「赤津のカツラ」(郡山市湖南町)と比較しても遜色がない。

質疑応答の時間に入ると、受講者への紹介も兼ねて質問した。「川前のカツラは、JR川前駅に通じる橋の上流約40メートルの夏井川右岸にある。無印(無指定)なのが不思議だが……」

木田さんは、直接、川前のカツラに言及したわけではない。が、やりとりのなかで、川岸にあることが指定を難しくしているのかもしれない、という思いがわいた。

 川は暴れる。濁流が堤防を越えたり、壊したりすることもある。すぐ応急工事に入らないといけない。指定にも解除にも時間がかかる天然記念物は、堤外(河川敷・河畔林・川など)にはない方がいい、ということだろうか。しかし、法の趣旨は川岸だろうと川の中だろうと尊重されるべきだから、これは私の早とちりかもしれないが。
川前のカツラの鮮明な写真が11年前の拙ブログに載っていた。それを再掲=写真上=して、考える材料の一つにしたい

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