入江明日香(1980年~)という美術家を、先週金曜日(7月19日)まで知らなかった。いわき市の隣、北茨城市の茨城県天心記念五浦(いずら)美術館で土曜日、企画展「入江明日香―心より 心に伝ふる 花なれば」が始まった=チラシ写真(右側は館内限定)。その情報が同美術館のフェイスブックにアップされた。
するとこれは全く偶然だが、カミサンが「日曜日に五浦美術館へ行こう」という。いわき駅前のラトブで企画展のチラシを手に入れた。それに刺激されたらしい。
チラシには大正~昭和時代に活躍した高畠華宵風の少女が描かれている。が、ただの乙女ではない。写真左のチラシでは、左手に革の手袋をはめ、タカらしい猛禽を止まらせている。青い目をした乙女が実は鷹匠だった――かどうかはともかく、39歳なのに一筋縄ではいかない銅版画家だということはわかる。
初日に続いて二日目も午後1時半から、作家本人によるギャラリートークが行われるというので、それに合わせて出かけた。
「江戸淡墨大桜」にしぼって書く。図録に「岐阜県にある伝説の大桜を描いた。二度死にかけたというその大桜をいつか描こうと思っていた」とある。国の天然記念物に指定されている「根尾谷淡墨桜」をモデルにした横長の超大作(六曲一双屏風)で、「桜といえばお花見ということで、樹の下には、七福神をはじめ様々な人々の楽し気な宴会の様子を描いた」。ひしめく花の間には鳥たちも。
ギャラリートークで作者の遊び心を知る。七福神の宝船が右隅に描かれている。船に乗っているのは、しかし4人だという。ほかの3人は絵の中に隠れている。2人はすぐわかった。もう1人は? どこにまぎれこんでいるのか、わからない。ということは、それを探す楽しみもある。
ついでながら、人と花と鳥だけでなく、キノコもどこかにひそませたら楽しみが倍加するのだが、それはなかった(ようだ)。
ギャラリートークには、およそ100人が集まった。技法的にはしろうとだからわからないが、銅版画を基本にしながら、「江戸淡墨大桜」だと、花びらをつくって張っていく(コラージュする)。膨大な数と気の遠くなるような時間がかかる。しかも、遊び心を忘れない。フランスに留学して江戸時代の浮世絵に引かれたとかで、遊び心の源泉はそんなところにあるのかもしれない。
「若手アーティストの中でもトップランナーのひとりとして、人気急上昇中」だという。作品と作家の話に触れて、ジャンルを超えた絵のおもしろさを知った。それこそが人気の秘密なのだろう。
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