この冬は白菜漬けに“野心”を持ちすぎたようだ。1回目は水の表面に産膜酵母が張るのを遅らせようと塩分を多めにした。しんなんりしたのを口にするとしょっぱい。甕(かめ)から取り出しては水につけて塩出しをした。
2回目は塩分を元の量に戻した。極寒期と重なったこともあって、産膜酵母は張らなかった。まずまずの出来だったので、後輩に2切れ(1株の4分の1)をプレゼントした。
3回目は1回目と逆に、どのくらい減塩できるか試した。適量の塩分だと、漬けて2日もすれば、浸透圧で白菜からしみ出た水が上がってくるのだが……。
3日がたち、4日がたっても水は上がらない。甕の底の方が少し湿りを帯びているだけだ。塩分が少なすぎた。さて、どうしたものか。
3回目を漬けるころ、いわき市小川町に住む旧知のUさんから手紙が来た。この冬、Uさんがつくった3回目と4回目の白菜漬けのレシピが同封されていた。ブログで私が白菜漬けに失敗した話を書いた。それで、白菜漬けの「マル秘」を伝えることにしたのだという。
わが家で3回目を漬けたとき、ブログでレシピの内容を少し紹介した。Uさんは洗わない・干さない・二度漬けする――を実行している。「レシピは、この冬4回目を漬けるときがあれば、参考にしよう」とも書いた。
4回目どころか、3回目の途中でレシピを参考にした。「差し水は3%塩水500ccをタルのフチから注ぐ」。これにすがったのだった。
目盛りの付いた片口ボールがある。180ccまで水を注ぎ、3%に見合う食塩を加えて溶かし、甕に2回注いだら白菜の上までひたひたになった。
キュウリでもこんなのがあったな――。いわき市川前町の昔野菜「小白井きゅうり」がそうだ。関西ではぬかみそ漬けのことを「どぶ漬け」というようだが、川前では夏場、塩水で漬けることをそう呼ぶ。
平成23(2011)年3月、いわき市が『いわき昔野菜図譜』を発行した。その中に出てくる。一度沸騰させた塩水に小白井きゅうりを入れ、重しをのせて10時間ほど漬けると食べられる。
差し水を利用した「白菜のどぶ漬け」だ。数日たったところで試食した。株元はむろん、葉先も生に近い。
最初の白菜漬けが切れたところで、再び甕から取り出して試食する。少ししんなりしてきた感じはあるが、株元の食感はやはり生に近い。あっさりした塩味なので、食べる分には違和感はない。そのうち株元もしんなりしてきた。
ということで、これは半分負け惜しみなのだが……。サラダ感覚の新しい白菜漬けができた。ご飯のおかずだけでなく、晩酌のつまみにもなる。食べ方の幅が広がった。
そのうえでの反省。白菜漬けのような家庭の伝統食はすでに経験則が確立している。よけいな試みはしない。「下手の考え休むに似たり」という。あれこれ頭で考えないで体が覚えていることに従うのが一番だ。
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