2023年1月28日土曜日

朝ドラの「新鋭歌人」

           
 このところ、飛行機雲=写真=を見るたびに、朝ドラの「舞いあがれ」を思い出す。なかでも注目しているのは、主人公・岩倉舞の幼なじみの一人、梅津貴司クン。舞の家の隣はお好み焼き屋「うめづ」で、そこの一人息子だ。短歌を詠む。きのう(1月27日)は応募した「長山短歌賞」の受賞の知らせが入った。

 子どものころからやさしく繊細なところがあった。近所の古本屋「デラシネ」に舞たちと入り浸っていた。

 店主の八木巌は文学に詳しい(ようだ)。2冊だけの自分の詩集も持っている。子どもの貴司がそれを読み、やがて詩を書き始める。

 ところが、就職して営業マンになったものの、思うように成績が上がらない。そのうえ、「避難場所」でもあったデラシネが閉店する。

 ここからあとはネットで記憶を修正しながら書く。突き放すような八木の励ましが心にしみる。「息ができへんぐらいしんどいときに生まれるのが詩や、もがいたらいいんや」

 八木からじかに閉店の話を聞いた貴司は「今、この店までなくなってしもうたら、僕どないしたらええんか」。すると、「短歌にしてみ。5・7・5、7・7のリズムに乗せたら、詰まった言葉も流れ出すで、きっと」。

貴司は間もなく会社を辞めて失踪する。舞は子どものころ、しばしば発熱した。医師の勧めで環境を変えることになり、母親のふるさと・五島列島で祖母と暮らした。そのとき、五島から貴司に絵はがきを出す。その絵はがきの灯台に貴司がいた。

さて、それからは歌人としての貴司が強調される。節目、節目で貴司が登場し、短歌が挿入される。

舞が航空学校を卒業したときには「屋上を/めぐり続ける/伝書鳩/飛べるよ高く/浮き雲よりも」。最初の文字に1字だけフリガナが付いている。それをつなぐと、「お・め・で・と・う」になる。

パイロットになる夢をあきらめて、父の残した工場の再建を決意した舞に、こういって励ます。「トビウオは、水の中におってもトビウオや」。もう一人の幼なじみがどういう意味かただすと、「歌人に解説求めるのは野暮やで」。これには笑った。そのとおりだから。

たぶん、そのときから貴司がぐっと近い存在になった。すると。やはり――というか、舞を励ます短歌が登場した。「君が行く/新たなる道を/照らすよう/千億の星に/頼んでおいた」

口語調の短歌は『サラダ記念日』以来だなと思っていたら、その作者俵万智さんがツイッターで貴司の歌を絶賛していることを知った。

最近は、とうとう劇中の新聞歌壇「今月の新鋭歌人」コーナーに取り上げられた。「歌壇桑野編」で短歌5首が紹介された。貴司の母親が舞たちに新聞を見せる。親としてもホッとしたことだろう。

新聞で貴司の成長を知った「デラシネ」の元店主が貴司に店のカギを渡す。貴司は今や、デラシネの2代目店主だ。近所の子どもたちも居場所にしている。

20歳前後は騒然とした東京で貴司のように思い屈していた。賢治童話を読み、詩を書くことだけが救いだった。そんな根無し草(デラシネ)的な記憶が貴司の生き方に重なる。

1 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

遅ればせながら・・・・ある青春ですね。