映画「SEED~生命の糧~」の上映イベントが立春の日の2月4日、いわき駅前のまちポレいわき(地下)で開かれた。いわき昔野菜保存会が主催した。
上映会は去年も企画されたが、コロナ禍のために中止になった。その意味では2年がかりのイベントだ。
午前と午後の2部制で行われた。江頭宏昌山形大学教授が講演し=写真上、映画を見たあと、在来作物(昔野菜)を栽培している保存会員などによる報告(おはなし会)が行われた。種子の交換会も開かれた=写真下。
映画は2016年、アメリカで製作された。監督はタガート・シーゲル、ジョン・ベッツの2人で、環境活動家のバンダナ・シバ(インド)らのほかに、霊長類学者のジェーン・グドール(イギリス)が登場した。
世界では、人々によって大切に受け継がれてきた在来作物の94%の種子が消滅し、種子の多様性が失われつつある。気候変動や多国籍企業の市場独占などが要因だという。映画はそうした中で在来作物の種子を継承することの大切さを訴えていた。
江頭教授は同保存会の顧問で、いわき市が震災直前の平成23(2011)年1月に開いた第1回昔野菜フェスティバル以来、イベントで講師を務めている。
今回は「在来品種継承のための課題」と題して話した。これまで江頭教授が話してきた内容を重ね合わせると、こんなことがいえるようだ。
農作物は在来品種から近代品種に切り替わった。在来品種は、「均一性」では近代品種にかなわない。近代品種は優秀性と均一性を追求してつくられた。効率重視社会の価値観が反映されている。
さらに、在来作物は生産・流通効率が悪い。後継者不足と栽培者の高齢化にも直面している。課題は新しい担い手をどう確保するか、だろう。
江頭教授は研究者として在来作物に的を絞ったきっかけを、2人の先達の言葉から紹介した。
ひとつは、青葉高元山形大学教授が本に書き残した「野菜の在来品種は生きた文化財」という言葉。もう一つはKJ法で知られる川喜多二郎東京工業大学名誉教授の三つの科学(書斎科学・実験科学・野外科学)の統合。在来品種の調査・研究には野外科学が欠かせない。
午後の部の司会を担当したので、2人の学者の名前が出たついでに、第1回昔野菜フェスティバルで聴いた「生産消費者(プロシューマ―)」について尋ねた。
初回の講演で江頭さんは、未来学者アルビン・トフラーの『第三の波』を紹介しながら、通常の経済とは別の「非金銭経済」の出現について触れた。
「社会の冨」が金銭だけでなく金銭以外のものも含むようになった、「生産消費者(プロシューマー)」が登場してきた――。生産消費者とは、たとえばDIY、ガーデニング、家庭菜園を楽しむ人であり、ボランティアやNPOの活動もそれに含まれる。
あとで自分のブログを読むと、以上のことが書いてあった。今回もそれを再確認する場になった。在来作物の継承にはたぶん、若いプロシューマ―が必要になる。
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