BSプレミアムで先日(2月7日)、「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」を見た。ホワイトハウスとワシントン・ポストの確執を描いた映画だ。現実にはニューヨーク・タイムズが機密文書をすっぱ抜き、ワシントン・ポストが後から追いかけた。
手元には図書館から借りてきた、スティーヴ・シャンキン/神田由布子訳『権力は嘘をつく――ベトナム戦争の真実を暴いた男』(亜紀書房、2022年)があった=写真。こちらは、この機密文書を持ち出した権力内部の人間に光を当てている。
同書は去年(2022年)秋、図書館の新着図書コーナーにあったのを借りて読んだのが最初だった。その後、何回か借りて読み返している。
泥沼化したベトナム戦争と権力者の思惑が描かれる。一人はジョンソン大統領、もう一人はニクソン大統領。
『権力は嘘をつく』の主人公は、「軍事アナリスト」としてペンタゴン(国防総省の本庁舎)で働いていたダニエル・エルズバーグだ。
ジョンソン政権下、マクナマラ国防長官が部下に指示してまとめた機密文書の報告書がある。「アメリカのベトナム介入を1945年までさかのぼり、時代ごとに調査、研究したもので、やがてこの報告書は『ペンタゴン・ペーパーズ』として悪名をはせる」ことになる。
研究チームのリーダーから誘いを受けて、エルズバーグは自分の知識を深めるために参加する。
その彼が、ジョンソンからニクソンへと大統領が代わったあと、ペンタゴン・ペーパーズを持ち出してコピーし、メディアにリークする。
「ベトナム戦争が権力者のメンツや選挙対策によってエスカレーションしていくことに疑問」を持ったからだという。
本のPR文を借りれば、「なぜ権力者たちは戦争を止めないのか? 彼らのメンツは、兵士や市民の命より大切なのか? 報道の自由とは? 国民の『知る権利』とは? 戦争の構造は、変わらない。権力者は、その力の維持を自己目的化していく」
その権力の欺瞞を暴いたのが「ウオーターゲート事件」だ。ニクソン側の人間がエルズバーグを追う、その一味がまたウオーターゲート事件を起こす。『権力は嘘をつく』のなかでウオーターゲート事件が取り上げられていたのはそのためだった。
アメリカに限らない、権力の裏側ではこうしたことが日々、繰り返されているのではないか――そう思わせるような事例でもある。
日本でいえば、アジア・太平洋戦争のときの「大本営発表」がある。「新聞用紙の配給」を武器にメディアの統制がはじまり、勝っているうちにはそれなりに正確だった「大本営発表」が嘘で塗り固められていく。
ロシアのウクライナ侵攻から間もなく1年。そこでもまた、プロパガンダが行われていることだろう。
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