2023年2月16日木曜日

エレンとコレン(続)

        
  土曜日(2月11日)の朝、小川町の「白鳥おばさん」から電話が入った。「エレンとコレンが赤井の橋の下にいる。工事の人もかわいがっている」。消息が途絶えたエレンとコレンの情報だ。しかも、2羽とも生きている。

エレンとコレンは翼をけがして北へ帰れなくなったコハクチョウだ。赤井の橋の下は、いわきの夏井川でハクチョウの最初の越冬地になった平窪地区。今は水害復旧工事が進められている。

エレンは一昨年(2021年)の春、三島(小川町)の越冬地に残留した。そこへ幼鳥が1羽飛来した。白鳥おばさんは「コレン」と名付けた。

「コレンは、4月5日にやって来て5月6日にいなくなった」という。およそ1カ月、エレンと共にいた。体力が回復したあと、コレンは本能に従って北を目指したのだろう、と私は考えた。

そのあと、エレンが三島から姿を消す。白鳥おばさんによると、去年5月27日の大水で流された、平窪まで見に行ったがいなかったという。

それからほどなく、白鳥おばさんから電話がかかってきた。三島からざっと2.5キロ下流、夏井川右岸にJAの梨選果場がある。「『選果場の裏にいる』という連絡をもらった」という。私も後日、選果場の下流にいるエレンを確認した。

8月に入るとまたSさんから連絡があった。エレンの姿が見えなくなった。獣に襲われた可能性がゼロではない。が、現時点ではいなくなったということしかわからない。

左の翼をけがして残留したコハクチョウが1羽、偶然にも下小川地区にいた。白鳥おばさんはこちらのハクチョウにも2日に1回、玄米をえさとしてやっていた。

「コレン」と呼んでいるが、エレンと共に三島に一時残留していたコレンとは別の個体だろう。いわば「第二のコレン」。これも、やがて姿を消したらしい。

ふだんは平・塩~中神谷で、日曜日は三島でハクチョウたちを見ながら、エレンたちの幻を追いかけていた。

そこではハクチョウたちのいろんな動きが観察できる。水面から飛び立つ瞬間、あるいは着水するところ。川筋を飛ぶ瞬間は普通のデジカメでも撮影できる=写真。

 それはともかく、久しぶりの朗報だ。この目で平窪にいるエレンとコレンを確かめないと――。

 白鳥おばさんから連絡があった翌日曜日、夏井川渓谷の隠居へ行く前に、赤井と平窪を結ぶ久太夫橋の左岸たもとから双眼鏡で川面を観察した。ほんとうは岸辺に立つのが一番だが、工事中のために近づけない。

 それもあって、エレンもコレンも、ほかのハクチョウたちも確認できなかった。こうなったら何回か通うしかない。そう決めて隠居へ向かった。

 この日は午後、気温が上昇した。三島の右岸にはハクチョウにえさをやりに来た家族連れでかなりの数になっていた。ハクチョウも慣れたもので、岸辺にいっぱい集まっていた。

0 件のコメント: