2023年2月11日土曜日

手前みそ

                      
   いわき昔野菜保存会では、昔野菜フェスティバルのほかに、「じゅうねんドレッシング作り」(じゅうねんはエゴマの方言)、「おいしいみそ作り」などの体験教室を開いている。

 この3年、フェスティバルが中止になったり、映画「SEED~生命の糧~」の上映イベントが1年延期(先日開催)されたりと、コロナ禍の影響をもろに受けている。しかし、それはほかの団体も同じだろう。

 そのなかで、去年(2022年)も手前みそ作りが行われた。今回はこの手前みそのお福分けにあずかった=写真。

 私はみそ作りに参加したことはない。昔野菜保存会らしい取り組みなので、保存会の会報などを参考にして、原材料や作り方をおさらいしてみる。

 原料の大豆は、いわき市田人町荷路夫地区で栽培が確認された在来種の「さとまめ」だ。市が発行した『いわき昔野菜図譜』(2011年)によると、種皮は少し赤みがかった茶色をしており、主に甘納豆や豆腐、みそに加工されている。なかでも、みそはやさしさを感じる色合いに仕上がる、という。

先日開かれた上映イベントで、参加者から「いわきの豆類」の現物見本をちょうだいした。もちろん、さとまめも入っている。横に長ひょろい緑色の「あおばた」と違って、丸くて小さい。直径は8ミリほどだ。

実は去年秋、保存会の事務局から、さとまめみそができた、私の分として1キロ取ってある、いつでも取りに来て――。うれしい連絡が入ったが、そのままにしていた。結局、上映イベントの当日、事務局からじかにいただいた。

去年の手前みそ作り教室は5月中旬に開かれた。講師の新妻ゆき子さん(大久)によると、ヤマブキの花が咲くころ、麹の出来が最高になる。

仕込んだみそは秋まで涼しい場所で保管する。土用のころ(7月中旬)に一度、天地を返す。そうして夏を越せば完成、だそうだ。

同保存会の会報「ROOT(ルート)」第5号(2020年5月発行)に手前みそ作り教室の記事が載っている。

それによれば、大豆はさとまめのほか、あおばたや黒豆でも可で、事前に準備した米麹を合わせて仕込む。それを各自、タッパーに入れて持ち帰り、天地をひっくり返して夏を越せば、秋にはもう手前味噌が食べられる、ということのようだった。

みそ作りは寒仕込みが定番だが、麹が一番いいときを見定めて、初夏に仕込むというところがミソらしい。

ヤマブキの花と麹の関係を聞いて思い出したことがある。夏井川渓谷の小集落で、古老からこんな話を聞いたことがある。「キンモクセイが咲くとマイタケが採れる」(平地では「キンモクセイが咲くとハクチョウが間もなく飛来する」だろうか)

食文化は風土と結びついている。つまり、風土はフード。語呂合わせだが、意外と本質を突いているのではないかと、あらためて思った。

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