日曜日(2月19日)の夕方、いつもの魚屋さんへ刺し身を買いに行くと、店主の表情がいちだんとにこやかに見えた。
「カツオがあります」「おっ、今年の初ガツオだ!」。大きいカツオだというから、銚子沖あたりにとどまっていたのだろうか(前にそんな話を聞いたような気がする)。
カツ刺し=写真=は去年(2022年)11月13日以来、ほぼ3カ月ぶりだ。この間、刺し身はマグロやタコなどだったので、わさび醤油しか使わなかった。
ニンニクのかけらが残っていた。少し出かかっていた芽を取り除いておろし、久しぶりに“にんにくわさび醤油”でカツ刺しを食べた。“とろガツオ”とまではいかないが、それなりに濃厚な味だった。
日曜日はカツ刺し、あるかぎりはカツ刺しと決めている。「いわきの日常」が戻ってきた――そんな思いがまず頭をよぎった。
ブログに残っている「初ガツオを食べた日」は、早い順から1月17日(2021年)、1月23日(2022年)、2月3日(2018年)、2月7日(2016年)だ。それに比べたら、今年は少々遅い。
阿武隈の山中で生まれ育った人間がいわきに移り住み、根を生やしたのは、半分はカツ刺しのうまさを「発見」したからだ。
刺し身はカツオに限る。オフシーズンは刺し身なしでもかまわない。そう決めて、冬は魚屋さん通いを中断していた。
しかし、刺し身はカツオだけではない。サンマ、ヒラメ、イワシ、ホウボウ、タコ、イカ、タイ、メバチマグロ、天然ブリ、皮をあぶったサワラ……。冬には冬の刺し身がある。冬はカツオ以外の刺し身を味わうシーズンだと、あらためて知ったのは震災後だ。
忘れがたいのはホウボウだ。ホウボウは粗汁も上品だった。初めて口にしたのは平成25(2013)年の師走。そのときのブログを再掲する。
――秋にカツオの刺し身からサンマの刺し身に替わり、それも品切れになって、白身の魚中心になった。
そろそろ打ち止めかと思いながら、師走に出かけると、ヒラメとホウボウ、皮をあぶったサワラの刺し身があった。
サワラとホウボウは初めてだ。盛り合わせにしてもらった。ホウボウの甘みに引かれた。白身も捨てがたい。
で、次の日曜日はヒラメも加えてもらった。ヒラメのえんがわがコリコリしてうまかった――。
というわけで、震災後はかえって1年をとおして刺し身を口にするようになった。ホウボウ以外では、イワシの濃厚な甘みが忘れられない。
そのイワシを、先日、後輩が持ってきてくれた。塩屋埼で捕れたばかりだという。前に漁師の知り合いがいると言っていた。そのルートでお福分けにあずかったのだろう。
夫婦で食べるには多すぎる。近所にもお福分けをした。わが家の分は、カミサンが手開きでてんぷらにした。
熱いうちに食べるのが一番。作家の故池波正太郎さんの言葉にならって、親の敵にでも会ったつもりでイワシのてんぷらを腹に収めた。
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