きのう(2月7日)の続き――。いわき昔野菜保存会は2月4日、映画「SEED~生命の糧~」の上映イベントを開いた。同保存会顧問の江頭宏昌山形大学教授の講演と、会員らによるおはなし会も行われた。
午前の部のおはなし会では、大久の新妻ゆき子、佐藤三栄さんの2人が「大久じゅうねん保存会」の取り組みについて語った。
じゅうねんはシソ科のエゴマの方言だ。じゅうねんはいわきをはじめ、阿武隈の山里で広く栽培されている。
私は15歳まで阿武隈の山里で育ったので、小さいころから「じゅうねんよごし」には親しんできた。畑のじゅうねんを見たことはないが、食卓では普通の食材だった。
大久では、新妻さんが中心になって栽培している。新妻さんの話で「なるほど、ネギと同じだ」と思ったのは種子の選別法だ。
5月にじゅうねんの種をまき、10月下旬から収穫する。根元から刈り取って干し、たたいて実を落とす。泥や枯れ草を洗って落とし、乾かして袋詰めにする――。
ネットの「いわき野菜ナビ」にある「洗って」が「水選(すいせん)」を指すことを、新妻さんの言葉で初めて理解した。水に浸してごみなどを取り除き、すぐ引き上げれば、種子の内部まで水はしみ込まない。それを乾かせばいいのだという。
夏井川渓谷の隠居の庭で三春ネギの栽培を始めたばかりのころ、種の選別に苦労した。ネギの師匠(平)から「水選」にすれば、砂は沈み、中身のない種は浮くので簡単に種選りができることを学んだ。
自家採種を続けている栽培者にとっては、じゅうねんであれネギであれ、種の選別は悩ましい問題だったにちがいない。水選は栽培者の試行錯誤が生み出した知恵というべきだろう。
午後の部は、私が司会を担当した。江頭教授の講演のあと、昔野菜を栽培している桜井三千男・真理子さん夫妻、休耕地を借りてチームで市民農園を運営している、イタリアンレストラン「テラッツァ」オーナーの小野田康行さんが登壇した。
小野田さんが代表を務める「明るい農村カンパニー」については、前にブログで紹介した(2022年4月22日付「ツナガル畑」)。
ここでは桜井夫妻に絞って書く。桜井さんは「定年帰農」組だ。東京から平の実家へ戻って間もなく12年。家の田畑を引き継ぎ、米と野菜を自給し、今では「販売農家」の仲間入りをした。
国連は2019~28年を「家族農業の10年」として、さまざまな取り組みをしている――。このことを知っている人は? 会場に問いかけると、江頭教授以外は誰も知らなかった。むろん、私も。
世界の農家戸数の90%は家族経営、「新しい小農」としての農的暮らし・田舎暮らしなどが大事になる、ということだった。
イベント終了後、真理子さんから「いわきの豆類」と題した実物見本をちょうだいした=写真。在来作物の多様性を象徴するような美しさに息をのんだ。
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