テレビでトリュフを人工的に発生させることに成功した、というニュースに接したので、発表元を検索したら森林総合研究所だった。
プレス用の資料=写真=によると、トリュフは日本国内にも自生し、その栽培化が期待されている。同研究所では、「白トリュフ」であるホンセイヨウショウロを人工的に初めて発生させることに成功した。
栽培技術を確立することで、ホンセイヨウショウロが新たな食材として安定供給される、その風味を生かした加工品の開発など新たな産業の創出が考えられる――。
資料を読んで、近い将来、「栽培トリュフ」が店頭に並ぶようになるかもしれない、そんな期待が膨らんだ。
ホンセイヨウショウロは、いわきでも発生が確認されている。平成29(2017)年秋、いわきキノコ同好会(冨田武子会長)の会員が小川町の林道側溝わきでトリュフらしいキノコを採取した。そばにイノシシがミミズを探して荒らしたらしい跡があった。そこに転がっていたのだという。以下は拙ブログの抜粋。
――冨田会長はこれをあずかり、『地下生菌
識別図鑑』(誠文堂新光社、2016年)の著者の一人、森林総合研究所の木下晃彦さんに鑑定を依頼した。
結果は、2種ある日本固有のトリュフの一つ、ホンセイヨウショウロとわかった。冨田さんらは後日、裏付けのために現地調査をした。
すると、前よりは少し小さい個体を発見した。これも木下さんによってホンセイヨウショウロと同定された。
木下さんによると、ホンセイヨウショウロはナッツ様の香りがする、これまで宮城・栃木・茨城・大阪など6府県で確認されており、福島県内では初めての記録だった。
トリュフは、マツタケがそうであるように、生きた樹木の根に共生して繁殖する菌根菌だ。フランスでは、アブラムシによる被害を受けたブドウ畑のあとに、カシの若木にトリュフの菌根を摂取した感染苗木を植え、トリュフの発生と森林再生の一石二鳥を果たした例がある。
ザッカリー・ノワク/富原まさ江訳『「食」の図書館 トリュフの歴史』(原書房、2017年)に紹介されていた。
トリュフは最初、野蛮人の食べ物とみなされていた。そのうち媚薬効果があると信じられるようになり、王家や貴族が好んで食べるようになった。やがて、オーク(カシの木)を植林してトリュフを増産し、缶詰化する技術も確立して、「世界三大珍味」と持ち上げられるまでになった。
国産トリュフの人工発生に成功したというニュースに触れて、真っ先にこのことが頭をよぎった。
研究所では、ホンセイヨウショウロを共生させたコナラの苗木を、国内の4試験地に植えて栽培管理をしてきた。その結果、茨城県と京都府の試験地で、令和4(2022年)11月、それぞれ8個、14個の子実体発生を確認した。
欧州の例から、日本でも栽培化は不可能ではない、そう確信をもって研究を進めてきたのだろう。次は実用化へ向けた研究・開発になる。
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