ある朝、座卓に小さな虫の翅が降ってきた。虫の脚も胴体も、雪のようにサラサラと。見上げれば、丸形蛍光灯のグローランプのすきまがおかしい。なにものかが中に入り込んで虫の死骸を外に放り出している=写真上。それがいつまでも続く。座卓はたちまち虫の死骸でいっぱいになった=写真下。
四半世紀前にも似たようなことが起きた。蛍光灯の上の天井板を支える竹筒に穴が開いて、そこからクモの子の死骸が降ってきた。いろいろ調べてわかったのは――。
竹筒に穴を開けたのはジガバチモドキらしかった。ジガバチモドキは野外で小型のクモを狩り、巣に運んで幼虫のえさにする。その巣穴を襲撃するハチがいる。ルリジガバチ。このハチが巣穴からクモの死骸をくわえては捨てている。ポトリ、またポトリ。しばらくたつと、茶の間の畳の上が体長2~3ミリのクモの子でいっぱいになった。
蛍光灯をすみかにしたのは、同じハチの仲間だろうか。ランプのすきまから大小さまざまな虫の死骸を放り出しながら、ときに自分の尻も見せる。グローランプをはずし、カラスの羽で中を払うと、ハチらしい虫が1匹あわてて飛び出した。
肉眼では、犠牲になった虫の種類はよくわからない。撮影データをパソコンに取り込み、拡大してやっと姿を確認できた。カ、ハエ、カゲロウ、キジラミ、ウンカ、ヨコバイ、ガムシ、ガガンボ、イナゴの子らしい虫と、その他いろいろ。座卓に落ちた虫の死骸は1~数ミリを中心に200匹以上はいたろうか。
4年前の夏にも、変なことが起きた。カウチのカバーのへりに、きなこのような粉がこぼれていた。天井の竹筒の巣穴を見たが、穴のヘリにはきなこは付いてない。天井板のすきまから落ちてきたのか。そこに、きなこを落とす何かがいたのか。きなこが降ってきたのは、その日一日だけだった。庭と行き来が自由な「昭和の家」には、ときどき不思議なことが起きる。
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