その「下片寄バス停」がきのう(9月21日)、アニメと同じ場所に設置された=写真・上。ネットに写真がアップされていたので、午前10時すぎに行ってみた。もともと路線バスは走っていないところだ。とはいえ、周囲をロープで囲っていなかったら、事情を知らない人はホンモノのバス停と勘違いするかもしれない。ダミーとは思えないほど精巧だ。
アニメが公開された直後、いわき駅前のポレポレいわきで「薄暮」を見た。女の子が片寄の私立高校へ通っている。音楽部に所属している。バイオリンを弾く。女の子は、「下片寄バス停」で見る薄暮の景色に引かれている。原発事故で帰還困難区域からいわきへ避難してきた別の高校男子がいる、絵に描いて残したい風景を探して、下片寄へやって来た。2人の淡い恋物語を象徴するのが「下片寄バス停」だ。
アニメのチラシをアップする=写真・中。「下片寄バス停」の背後には実った稲穂の田んぼが広がる。ちょうど今の時期だ。稲の刈り取り前に合わせて設置されたのだろう。
実景にもとづくアニメとはいえ、アニメはアニメ、現実は現実。しかし、虚実皮膜のすきまを楽しむのも人間。架空のバス停ができたと聞けば、つい好奇心がわく。さっそくバイクの男性が「下片寄バス停」前にいた。邪魔するのもなんだから、少し周囲をドライブする。早くも稲刈りが行われていた=写真・下。
「下片寄バス停」が設置されたところは、水田地帯を東西に走る道路の南側。そばに小さな水路が伸びる。大小2本のソメイヨシノと「下片寄バス停」をはさんで、南の小集落へと通じる小さな橋が架かる。夕方になると、西方の石森山(224メートル)の上空が赤く染まる。どこにでもある、穏やかで美しい農村景観が広がっている。
前に、アニメに触発されて宮城や山形ナンバーの車が、「下片寄バス停」を求めてやって来た、という話を地元の区長さんから聞いた。聖地巡礼にふさわしく、時折、ファンが来訪しては、静かに、つつましく、写真を撮って周囲の景色を楽しむ――そんな情景が続くといい。
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