2019年9月30日月曜日

刺し身とラグビー

 夏井川渓谷の隠居で土曜日(9月28日)、泊まり込みのミニ同級会が開かれた=写真下。7人が参加した。1人でも2人でも集まったら飲み始めるのが慣例で、夕方4時には5人で最初の乾杯をした。
ラグビーのワールドカップ日本大会が開かれている。飲み会の始まりと一次リーグA組の日本対アイルランドの試合開始が重なった。

隠居には2部屋しかない。テレビもない。ふすまを開け放し、二つある座卓をくっつけて、刺し身の大皿やつまみなどを並べた。東の部屋の出窓にあるラジオをかけながら、缶ビールを開け、刺し身をつつき、近況を報告しあった。

飲み会の人間の“主音声”のほかに、ラジオの“副音声”が入る。台所へ行ったり、家の外へ出たりしたとき、ラジオに近づいて戦況を確認する。試合が始まる前、過去の戦いにとらわれて「40―3で負け」なんて言っていたのが、前半が終わった時点で12―9だ。「日本、がんばってるぞ」「おおーっ」と歓声が上がる。

後半戦に入っても、副音声が流れるなかでおしゃべりが続いた。ときおり、アナウンサーが高揚する。アイルランドに点が入ったか。そんな先入観で聞いているから、試合が終わった時点で「19―12」と知ったときには、「日本、惜敗、大健闘」。だれもがそう誤解した。

ところが――。7人目の人間の車が着いたのに、本人はなかなか顔を出さない。家の中に入って来るやいなや、「日本が勝った」「えっ、負けたんじゃないのか」。カーラジオで試合が終わるまで聞いていたのだ。座卓にスマホを出していた人間に情報を確認させる。やはり「日本が勝った」という。すぐさま仲間で握手をし合い、歴史的な勝利を祝った。

 いわきの片田舎の、谷間の小集落の、ちっぽけな隠居の6畳間でも、歓びが爆発した。日本列島全体に歓喜の輪が広がったことだろう。

刺し身は、私が毎週日曜日に通っている魚屋から買った。カツオを主に、タコ、アジ、ヒラメの盛り合わせを大皿で二つ。こちらはラグビーの試合と関係なく箸が出て、間もなく白身の魚だけになった。

 この10年ほど、夏か秋に開いているミニ同級会では、刺し身をメインディッシュにしている。去年までは、1皿はカツオ、もう1皿はカツオ以外の盛り合わせだったが、カツオの方が早くなくなる。あとから来た人間はタコだけということになりかねない。いつもの魚屋で、2皿とも同じ盛り付けにしてもらった。もう1皿必要だったか。

 翌朝は6時ごろ、目が覚めた。4人はすでに起きていた。新聞が届いているかも――玄関の外にあるイスを見たが、新聞はなかった。私や息子たちが泊まると、庭の車を見て旧知の新聞店主が予備の新聞を置いていってくれる。今回に限って予備がなかったのか。それとも、集落に店主が扱う新聞の購読者がいなくなったのか。

9時半には解散した。私はしばらく土いじりをして、11時ごろ、隠居を離れた。帰宅すると真っ先に新聞を読んだ。全国紙も県紙も1面トップで日本の勝利を伝えている。
夕方になると、カツオの刺し身が食べたくなった。前夜、口にしたカツ刺しは、5、6切れ。魚屋へ大皿を返しに行きながら、マイ皿にカツ刺しを盛りつけてもらった。いつもの日曜日の習慣も作用した。再び新聞=写真上=を読み、テレビでウェールズ対オーストラリア戦を見ながら、刺し身をつつき、田苑を飲んだ。

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