玄関の脇は茶の間の縁側。軒下からポリカーボネート波板の壁と屋根がせり出している。物を置いたり、洗濯物を干したりするのに使っている。そこにときどき、アシナガバチが営巣する。雨風はしのげるし、そばには草木の茂った庭がある。周囲にも緑が残っている。吸蜜するための花と、肉団子(幼虫のえさ)にするチョウやガの幼虫には事欠かない。
営巣の先例がある。軒下を見回すと、玄関の屋根とポリカ屋根の間に、あった。“はちす”にアシナガバチがびっしり張りついている=写真。
軒下に巣があっても、そのままにしてきた。人間がちょっかいを出さないかぎりは、ハチもおとなしい。いつか巣はからっぽになる。今度も、カミサンに巣のありかを教えて、静かにしていることにした。
エアコンのない家なので、夏場は戸や窓を全開する。虫にとっては茶の間と庭の区別がつかなくなる。ある年の夏、晩酌中にアシナガバチがやって来た。焼酎の入った“黒じょか”の注ぎ口をしばらくなめていた。このときも、どこか軒下に巣があったはずだ。
カミサンが小学校のバザーに出ていた鉢植えのツタを買ってきて、玄関前の雨樋の吐き出し口のそばに植えた。そのツタが壁を這い、どんどん生長して、玄関の屋根から台所の屋根までびっしり緑で覆うようになった。
花どきには虫がいっぱいやって来る。アシナガバチだけでなく、スズメバチも2階の屋根直下にある空気抜きの塩ビ管を出入り口にして、屋根裏に巣をつくった。スズメバチが巣をつくるようではまずい。ツタを根元から切ったら、翌年からスズメバチの姿が消えた。
今年(2019年)のアシナガバチはどんな様子か? ときどき、縁側から見上げるが、巣にじっと張りついたままだ。9月に入って初めて、きのう(9月5日)、様子をうかがうと――。ハチの姿がない。“空き巣”になっている。巣に気づいてカラになるまで、わずか10日だった。人間が静かにしていれば、アシナガバチも静かに去って行く。過剰に怖がる必要はない。
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