2019年9月2日月曜日

ホームステイ⑤別れの宴

8月15日の宵にいわき入りをしたときには、ダニエル夫妻が泊まる「ゲストハウス」(故伯父の家)で歓迎の小宴を開いた。あすはいわきを離れるという8月23日の晩には、わが家で軽く別れの宴を開いた=写真下1(抹茶で一服)
 ダニエル(32)はスペインのUCLM(カスティーリャ=ラ・マンチャ大学)で日本の1980年代以降の歴史を教えている。地元のローカルテレビ局で自分の番組を持つメディアの人間でもある。

一昨年(2017年)から毎年日本を訪れている。3回目の今年は7月19日に来日し、全国各地を回ってテレビのドキュメンタリーのためのインタビューを続けた。9泊10日のいわき滞在を最後に東京へ戻り、八王子にある学校へ行って学生の留学の話を詰め、ディズニーランドを見て、8月27日に帰国した。

 ホームステイ9日目ともなれば、少しはうちとけて突っ込んだ話もできる。日本とスペインの映画やテレビアニメ・漫画の話で盛り上がった。日本のアニメ・漫画が世界で注目されている。それを32歳のスペイン人が体現していた。

 ダニエルは子どものとき、「ドラゴンボール」や「キャプテン翼」「北斗の拳」などのアニメ・漫画を楽しんだ。「私は『ドラゴンボール』が一番好き。『北斗の拳』も好き」という。「タカハルも『北斗の拳』の漫画が好きだよ」と応じると、大笑いになった。「日本の映画も好き。監督では黒澤明。でも、教えている大学の学生はアニメが好きですね」

 カミサンがスペイン映画の「汚れなき悪戯」の主題歌「マルセリーノの唄」を口ずさむと、ラサレット(28)が反応した。ラサレットの専攻は英語で、日本語は全く解さない。が、カミサンの片言の英語とダニエルの手助けで、カミサンの映画の話に共感していた。音楽は言葉を越える。「ラサレットはスペインの古い映画が好きです」ともいう。

「汚れなき悪戯」が日本で封切られたのは昭和32(1957)年、カミサンが14歳のときだ。田舎には2年遅れてやってきた。女子高校生の脳髄に刻まれた歌は、年齢を重ねた今もきのうのことのように思い出されるらしい。そのころ私はまだ一人で映画館へ行けるような年齢ではなかった。

ダニエルのテレビ番組がどういうものかはよくわからない。が、ダニエルの兄のラサロが出演した動画を見せてもらった。このときはトーク番組のようだった。9年半前にいわき出身の画家阿部幸洋とともに来日し、わが家へ遊びに来たときよりは恰幅がいい。「太ったなぁ」というと、胴回りがこのくらいあると、両腕を広げてゆらした。

 翌24日は朝8時18分の特急ひたちに乗るというので、7時半には家を出た。大きなトランクが3つ。それに、去年に続くいわき滞在で手に入れたギターを背負っている=写真下2。「フィット」に詰め込み、4人が乗り込むにはなかなか大変だった。
これだけの荷物だから、バスは無理。タクシーにも乗りにくい。特急だって……と思っていたら、8月30日の全国紙に「新幹線 事前予約制の大型荷物スペース/JR東海・西・九州が来春」の記事が載った。「訪日客の増加に伴って、新幹線車内に大型荷物を持ち込む客は急増している」。予約なしで持ち込んだ場合は手数料1000円を徴収し、指定の場所に移してもらう、とあった。

東京オリンピックを機に、地方を旅行する外国人も増える。荷物の多さがトラブルの原因になるかもしれない。いわき駅へ着いた晩、タクシーに乗らずに草野駅まで行き、歩いてわが家へ来ようとしたのは、トラブルを回避する意味もあったか。それとは別に、歩くか自転車で――がヨーロッパの人間の気質らしく、別れの宴を開いた8月23日も、「20キロ歩いた」といっていた。いろいろ勉強になった10日間だった。

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