渓谷の隠居へ通い続けて二十数年、あちこちの路上でいきものの死骸を見た。夏井川と道路が並行するハクチョウの飛来地、小川町上平(うわだいら)地内あたりから、脳内で「ロードキルマップ」が点滅する。
上平ではタヌキと野ウサギ。その先、JR磐越東線をまたぐバイパスを過ぎて国道と分かれ、県道に戻ってすぐの片石田東バス停付近では、首の折れたフクロウ。夏井川渓谷の手前、高崎ではタヌキ、リス。渓谷に入ると、タヌキ、キジの雌、テン、イタチ、コジュケイ――。死んでいた場所まで鮮明に覚えている。
ロードキルのほかに、「死物学」ということばがある。事故で死んだ動物を解剖していろんな知見を得ることだが、私はむしろ死物から生物だったときの時間を思い、彼らが生きていた環境などを想像する。今でも不思議なのはフクロウだ。そこに生きていたこと自体に感動を覚えた。
1週間前の木曜日(8月29日)早朝、夏井川渓谷の隠居へキュウリをとりに出かけた。磐越東線の上小川トンネルと接する磐城街道高崎踏切の先、地獄坂(十石坂とも)になにか小さな動物の死骸らしいものが横たわっていた。帰りに車を止めて見ると、ニホンリスだった。
リスにはめったにお目にかかれない。20年ほど前、渓谷のヤマベ沢で日中、目撃したことがある。1、2カ月前にも県道をすばやく横切って行くのを見た。いることはわかっていても、じっくり見ることはない。ほかのいきものでもそうだが、死物で初めて形態を観察する。
以前、高崎で見たリスの死骸は頭部の損傷がひどかったが、今回は外見がきれいだった。写真を撮ったあと、これ以上車にひかれないようにと、死骸を道端に移した。
ブログを始めたのは2008年2月。それから撮りためた写真だけで「動物死亡図鑑」ができそうだ。
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