渓谷では、夏井川に沿って県道小野四倉線とJR磐越東線が走る。線路はときに川をまたいで県道と交差する。台風19号の影響で、磐東線はいわき―小野新町間がストップした。再開したのは1カ月余りあとの11月16日。県道も一時、通行止めになったが、オウンリスク(自己責任)で隠居のある牛小川へ行き来した。
12月最初の日曜日(1日)、台風19号のあと、初めて牛小川から田村郡小野町まで県道を駆け上がった。川も道路もあちこちで傷んでいた。
「山の食。川前屋」跡を過ぎ、「関の沢踏切」を渡って200メートルほど進むと、山側にガードレール代わりのパイプがあった。谷側、線路との境界にはベージュ色のフレコンバッグが並んでいる。
山側を見ると、ダイダラボッチがマサカリを振り下ろしたように、急峻な沢がむき出しになっている=写真上1。そのときはそのまま通り過ぎたが、「雨が降れば滝になる。降らなくてもチロチロ水が流れ落ちている。セドガロ(背戸峨廊)の子どもだ。何万年かあとには第二のセドガロになるのではないか」。そう思ったら、気になってしかたがない。
きのう(12月17日)、日曜日に行けなかった代わりに隠居へ出かけた。まずは隠居を通り越して「セドガロの子ども」を見に行く。沢の底部には、とんがった石がごろごろしている。木や草はちょっと上の斜面にしか生えていない。
ストリートビューで台風以前の姿を確かめた。「関の沢踏切」を渡ると、崖に落石防止用のワイヤネットが張られている。切れ目には木々が茂り、紅白の花らしいものが見える。線路と道路の境には、そこだけ白いガードレール。この木々とガードレールが消えたのだ。ということは、道路と線路の下に排水管があって、沢の水を逃がしているのだろうか。
台風19号のビフォー・アフターでいうなら、この木々もガードレールも、土石流によって線路にまではじきとばされた。それで、県道も磐東線も一時止まった、ということらしい。実際、土砂が線路の石を覆っていた=写真上2。
自然と人間の関係でいうと、川からあふれた水は人間の生命と財産を脅かすので「水害」になる。しかし、無人島などでは自然と自然の関係にとどまるので、「水害」ではなく「洪水」、自然の営みの一コマでしかない。
自然史的な現象として見ると、土石流が過ぎた沢は、ピカピカの、できたての野性そのもの、「セドガロの子ども」だ。台風19号はそれだけ激烈だった、ということでもある。
この台風のあと、釣りをする知人やオフロードバイクに乗る知人と話す機会があった。2人とも、それぞれの場所で見た水の力(浸食・運搬・堆積)のすごさに驚いていた。地球温暖化で海水温が上昇する。それが、今までにない大雨をもたらす。私たちが暮らしを営んでいる大地が、これからたびたびピカピカの野性を取り戻す、なんてことになっては困る、ということで一致した。
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