2019年12月8日日曜日

人類が「発酵」と出合うまで

 欧州ではヤマドリタケやアンズタケ、日本ではマツタケやシイタケ――。最も好まれるキノコがなぜ洋の東西で異なるのか。この1年、キノコに関する文献を読み漁っているうちにわいてきた疑問だ。調味料の違いかもしれない、というのが、現時点での私の考えだ。具体的には、バター・チーズと味噌・醤油の違い、といってもいい。
アンズタケは、欧州でも日本でも採れる。日本では、ポピュラーではない。私も採らない。小さいうえに量が集まらない。で、パスしてきた。が、欧州では違う。

10年前に高専の仲間と北欧を旅行したとき、スウェーデンで食べたグラタンのような料理にアンズタケが入っていた。アンズタケは、デンマークの八百屋=写真上=やノルウェーのコンビニでも売っていた。なぜこれが、こんなに売られているのか? 日本でいえばアミタケ、それに匹敵するくらいのキノコのようだ――そのときは、そんな反応で終わった。

先週の木曜日(12月5日)夜、いわき湯本温泉の古滝屋で文化と福祉のボランティア団体「ブッドレア会」の講師例会が開かれた。元いわき明星大客員教授の馬目太一さん(内郷)が「発酵とヒト」と題して話した=写真下。
微生物が専門の人らしく、地球の生命の誕生から話を始めた。地球誕生(46億年前)、生命体誕生(38億年前)と続けて、15億年前には単細胞真核生物が出現した。ここで真菌=カビ類が生まれたという(キノコはカビ類出現のあと、植物が陸上に上陸した4億年前ごろから出現するようになったらしい)。

真菌にはアルファベットで「fungiとカッコ書きされていた。「フンギ」は、イタリア語ではキノコを意味する「フンゴ」の複数形だ。

馬目さんはこのあと、真菌による発酵文化へと話を進めた。単純化すると、欧州は降水量が比較的少ないので、湿気を好むカビを使った発酵食品は育たなかった。日本はその逆に豊かな発酵食品を生み出した。ざっと分ければ、欧州:ヨーグルト・ワイン・ビール・パン、日本:納豆(大陸伝来)・醤油・味噌・糠漬け・日本酒などだ。バター・チーズも基本的には発酵食品だろう。

馬目さんの話を聴きながら、洋の東西でキノコ食文化が異なるのはこれかもしれない、調味料の違いがキノコの好みの違いを生んだのだろう、と腑に落ちた。

マツタケは欧州でも発生するようだが、香りが強すぎるという理由で敬遠される。代わりに、トリュフが好まれる。香りへの嗜好も調味料に関係するのかどうか――ま、しかし、これについては全く縁遠いキノコなので調べようがないのだが。

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