番組は、人工知能・AIで30年ぶりに美空ひばりを現代によみがえらせるNHKのプロジェクトを追った。研究者が「AI美空ひばり」を開発し、長年ファンだった女性などの声を聞いて改良する。その過程でひばりの歌声の特徴が明らかになる。スコア(楽譜)どおりではなく、音をずらしたり、高次倍音で歌ったり、というのが、ひばりの歌声の魅力になっているらしい。
ひばりの復帰第一作はいわきの塩屋埼を題材にした「みだれ髪」。そして、最後の歌が秋元康・作詞の「川の流れのように」。♪ああ かわのながれのように……の「か」が高次倍音だという=写真。
高次倍音とくれば、モンゴルの歌唱法「ホーミー」が思い浮かぶ。9年前、平地学同好会の会報(第27号)に冨田明雄会長が「中国内蒙古自治区の恐竜発掘地と博物館を訪ねて」と題する紀行文を寄せた。以下、当時の拙ブログの一部――。
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内蒙古自治区最後の夜、博物館長主催のお別れパーティーが開かれた。そこで一行は「ホーミー」を聴いた。「ホーミー」はモンゴルなどで行われている歌唱法の一つ。一人の人間が同時に二つ以上の声を出す。要するに、のどを楽器にしてメロディーを奏でるのだ。
冨田会長は「特にテレビなどでは見ていたが、ホーミーの独特の声は蒙古の草原に響き渡るような錯覚におそわれた」と書く。こういう人間の技が私には興味深い。
「ホーミー」は、「世界の民族音楽」といったCDには必ず入ってくる。私もそのCDを持っている。時々、車の中で聴く。塩漬けされたような渋い低音、そして高音。冨田会長ならずとも、テレビで見知っているモンゴルの草原が思い浮かぶ。
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ひばりは難なく高次倍音を出して歌った。それをAI美空ひばりも獲得したのかどうか。
それよりなにより、美空ひばりだからこそAIでよみがえらせる、というプロジェクトだが、一面では死者の眠りを脅かし、生者の気持ちをもてあそぶことになりはしないか、という思いもある。そのへんのバランスが難しい。倫理抜きでは進められないAI技術だ。
新曲「あれから」は、やはり秋元康が作詞した。これがけっこう胸に響く。人それぞれに「あれから」がある。♪夕日がまた沈んでいく/あっという間の一日……と始まって、中ほどで♪愛しい人よ/あれから
どうしていましたか/私も歳をとりました/今でも 昔の歌を/気づくと 口ずさんでいます……と続く。
マーケットは主に団塊の世代から上か。きのう(12月18日)、このCDとカセットテープが発売になったそうだ。
マーケットは主に団塊の世代から上か。きのう(12月18日)、このCDとカセットテープが発売になったそうだ。
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