例年だと、キノコ同好会は総会のあとに懇親会が行われる。そのため宵の開催になるのだが、今年(2019年)は台風19号の被害が甚大だったことから、勉強会止まりになった。
勉強会では、会員で石川町の元高校教員阿部武さんが「いわき産キノコの放射線量」と題して話した=写真。根拠にしたのは、冨田会長がいわき市などのホームページで公表されているデータをまとめて、年1回、会報に掲載している「キノコに降りかかった原発事故」だ。
それらのデータから、事故から7年たった2018年時点でも、キノコの線量に大きな変化はない、つまり線量は減っていないと、阿部さんはいう。その理由は、森に降ったセシウムをキノコの菌糸が集めてくるからだ。
キノコを植物にたとえると、地中に根(菌糸)を張り巡らして栄養を集め、子孫を残すために花(子実体)を咲かせて種子(胞子)を拡散する。その過程でカリウムに似たセシウムを取り込む。セシウムの吸収―放出―吸収という循環が森の中で行われているために、キノコは何年たっても線量が高いまま、ということになる。
セシウム134の半減期はおよそ2年、同137は30年。チェルノブイリ原発事故は1986年4月に起きた。セシウム137は3年前の2016年4月に半減期を迎えた。その時点での線量データがどこかにないものか。
ネットで検索したら、東京新聞の記事(2016年4月26日付)がヒットした。福島とチェルノブイリ周辺で被ばく調査を続けている独協医科大の木村真三准教授に記者が同行した。人々が暮らす村で食べ物や土壌を採取して調べた。その結果、何を食べたかで数値が極端に上下した。主な原因はキノコだという。
ある家族は、娘たちにはキノコ料理を「なるべく食べさせないように、普段から気を付けている」と答えている。それは当然として、半減期を迎えたセシウム137の線量そのもののデータはなかった。
ある家族は、娘たちにはキノコ料理を「なるべく食べさせないように、普段から気を付けている」と答えている。それは当然として、半減期を迎えたセシウム137の線量そのもののデータはなかった。
代わりに、至言といってもいいような言葉に出合った。発語者はベラルーシの赤十字赤新月社の事務局長氏。「セシウム137の半減期は30年だが、人の記憶の半減期はそれよりも、あまりに短い」。自然と向き合うことなく、街だけで暮らしが完結している人にとっては、原発事故の記憶の半減期はセシウム134並みに短い? 私も、キノコに興味・関心がなければ、とっくに森の放射線量のことは忘れていただろう。
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