2020年2月15日土曜日

「会話のドッジボールはだめ」

「ひきこもる人が一番いやがるのは『押しつけ』。会話のキャッチボールを。会話のドッジボールはだめ」。相手にぶつけるような言葉は逆効果だと知る。
 先週の金曜日(2月7日)、いわき市文化センターで教育文化講演会が開かれた。市青少年育成市民会議平地区推進協議会が主催した。埼玉県の田口ゆりえさんが「ひきこもりは誰にでも起こり得るもの」と題して話した。子どもたちの育成活動に携わっている平地区の各支部役員やPTAなどが受講した。

 田口さんはNPOのKHJ全国ひきこもり家族会連合会理事、同埼玉けやきの会家族会代表を務める(Kは家族会、Hはひきこもり、Jはジャパンの略)。自身の体験をもとに、各地で講演活動を続けている。

国の実態調査によると、ひきこもりは全国で推計100万人を超える。15~39歳より40~64歳の方が多い。きっかけは、4割近くが退職・人間関係・病気・職場になじめなかった――で、4分の3が男性だという。

ひきこもりの高じたものを「とじこもり」という。同じ家で親が20年も会っていなかった、だれとも話をしないからのどの機能が退化して声が出ない、食事がとれない、救急車で病院へ運ばれた――そんなケースもある。

 田口さんは複合化して深刻さを増すひきこもり問題を、事例を踏まえて紹介しながら、家族として、また支援者としてどう向き合ったらいいかを話した。

そのひとつが冒頭の言葉、「会話はドッジボールではだめ」。「学校へ行かないならバイトくらいしてほしい」「わがままだ」「このまま家にいられたら迷惑だ」などと、ひきこもりを否定・非難・批判しているうちは、気持ちの通い合いは難しい。

非受容・非共感ではなく、まず親が学習して「ひきこもらざるをえない本人の苦しみ、葛藤に寄り添う」。そうすることでいつか回復への道筋がみえてくる。ひきこもりが起きたとき、地域で孤立しないよう、家族を支援することも重要になる、という。

 支援者がやってはいけないこともある。田口さんは大きく4点を挙げる=写真(資料から)。①訪問支援など本人が望まない援助は暴力と同じ②本人が返答に困るような質問や詰問はだめ③指示・命令、良かれと思っての先回り、強引な提案もだめ④支援機関の都合で本人を引っ張らない――。あくまでも本人の意思や事情や状態に寄り添うことだという。

受容し、共感することが大切、という点で思い出したことがある。東日本大震災のあと、シャプラニール=市民による海外協力の会がいわきで交流スペース「ぶらっと」を開設・運営した。津波被災者や原発避難者が利用した。

スタッフとボランティアがいわき明星大(現・医療創生大)に出向き、臨床心理士でもある教授から「災害支援者のための傾聴技法」を学んだ。

最近読んだ認知症関係の資料にも、話は否定せずに聞くことが大切、とあった。「ゆっくりと共感し、話を聴く。共感的に聞くだけで被害妄想が消えることも珍しくない」。ひきこもりであれ、認知症であれ、「共感力」が大事になる、ということなのだろう。

それともうひとつ、田口さんのアドバイスで印象に残った言葉がある。「ゲームは一時的にも苦しさを解放してくれる手段になる。ネットはたったひとつの社会とのつながり」。「ゲーム・ネット依存」をばっさり切り捨てるのは簡単、しかしそれではひきこもる人の苦しみに寄り添ったことにはならない。画一的な見方が少しほぐされた。

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