隠居の庭は分教場の校庭くらいはある。その下の庭はさらに広い。放置していたらヨシが生え始めた。2年前までは年に2回、知り合いの造園業者に頼んで庭の草刈りをした。それを1回にしたら、下の庭がヨシで覆われるようになった。
隠居に着くと、下の庭の枯れヨシはきれいに刈り払われていた=写真。午後1時を過ぎようという時間だったので、すぐ昼食にする。茶飲み話になって、なぜこの日に枯れヨシ刈りをしたかがわかった。
ご主人は市民ランナーだ。去年(2019年)、いわきサンシャインマラソンに出るつもりで準備をしていたら、雪で中止になった。今年こそは――。2年分の闘志を燃やしていると、大会(2月23日)の4日前に、新型コロナウイルスのために、またまた中止が決まった。フルマラソンにエントリーしていた。草刈りの電話がかかってきたのは、その翌日ではなかったか。
マラソン中止の話を受けての、私の想像――。ご主人の脳内にはフルマラソン挑戦というエネルギーが充満していた。そのエネルギーをどう発散したらいいものか。考えあぐねているうちに、前に一度草刈りに行った渓谷の家の庭を思い出した。枯れヨシ刈りに意識を切り替えながらも、脳内ではフルマラソンに挑戦していたのではないか。
「『三度目の正直』というから」。ご主人の話を聴きながら、カミサンが慰める。私は逆に、2月の気象の不安定さが気になるので、「『二度あることは三度ある』かも」といってしまう。「サンシャインいわき」は青空が続く冬のいわきのことを指す。しかし春先、南岸低気圧が東進するとき、天気が崩れる。雪になりやすい。時期が悪いのではないかといっても、1万人も人が集まるような大会は2月にしか組めないのだろう。
2人を見送ってから平地へ下りると、1人、また1人、道路を走っているランナーとすれ違った。サンシャインマラソンにエントリーしていたかどうかはもちろんわからない。が、“ひとりサンシャインマラソン”を敢行した市民ランナーは多かったにちがいない。
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