2020年2月17日月曜日

イナダのバターソテー

 ある日の夕方、高専の後輩が魚を持って来た。次の日、フェイスブックで知ったのだが、お福分のお福分けだった。後輩はイナダを刺し身と粗汁に、サバをブツ切りの味噌煮にした、という。
発泡スチロールの箱にイナダが1匹、サバが2匹入っていた。氷と水につかっている。うろこはとってあるようだが、内臓はまだ。晩酌を始める時間だったので、一晩おいて翌日昼前、魚をさばいた。頭を取り、内臓を取り出したら、イナダとサバ1匹から小魚(イワシ?)が出てきた。食物連鎖を目の当たりにして、脳みそに稲妻が走った。

 東日本大震災と原発事故の前は、広野町の歯医者さんの奥さんが、ご主人が沖で釣ってきたスズキをときどき持って来た。うろこと内臓を取り、三枚におろすことを“自習”した。

震災後は、それが途絶えた。あるとき、近所の歯医者さんの奥さんがヒラマサを持って来た。三枚におろした一部で、歯医者さんの友人が日本海で釣ったものだという。原発事故後、中通りへ避難した広野の歯医者さんは日本海で沖釣りをするようになった、と聞いていた。もしかして友人とはその歯医者さん? いやいや、そこまで詮索する必要はない。皮をはぎ、刺し身にして、ありがたくちょうだいした。

 試験操業が始まってからは、久之浜の知人からお福分けが届いたこともある。それ以来の鮮魚だ。自分のブログを読み返したり、ネットで魚のさばき方をおさらいしたりしてから、台所に立った。イナダは三枚におろし、サバは開いただけにした。いずれも身はギザギザ、惨憺たる姿だ。

 イナダは、カミサンがブツ切りにしてバターソテーにした=写真。淡泊な味だが、ニンニクが効いている。なかなかいい味だった。サバは? カミサンが1匹を近所の若い奥さんに進呈した。竜田揚げにしたそうだ。最初は後輩にならって味噌煮をと考えたが、醤油ベースのたれに漬けて片栗粉で揚げる竜田揚げもいい。きょう(2月17日)の晩酌のさかなはそれか。

こういうときにはいつも「プロシューマー」(生産消費者)とか「6次化産業」とかいう言葉を思い出す。
 
「プロシューマー」は『第三の波』の著者、アルビン・トフラーの造語だ。「コンシューマー」(消費者)であって「プロデューサー」(生産者)――カネではなく、家族や自分の満足のために生産する消費者のことを指すらしい。いわき昔野菜フェスティバルで江頭宏昌・現山形大教授が紹介した。

「6次化産業」は、例えば自分で野菜をつくり、漬物にして売る、あるいは魚を捕って干物にして売る、といったことをいう。生産と消費の間に「加工」(調理)・「販売」が加わる。

この「販売」が「贈与」に変わることもある。今度のイナダとサバがそうだ。ただの消費者でも「加工する」が加われば、「6次化産業」いや「6次化生活」の一端を楽しめるのだが、「加工」のウデはさっぱり上がらない。

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