2020年2月28日金曜日

空のカーテン

 街のホームセンターへ行くのに、田んぼ道を利用した。朝10時。照り曇りがいそがしいなか、西の山並みを見ると、真ん中だけかすんでいる=写真下。
  家が火事になると白煙が立ち込める。それに似る。どこから煙が? それらしいところはない。地上からの煙ではなく、空から降ってくる雨か雪のカーテンだった。

西の山並みと私の住む平・神谷の間には、鎌田山と夏井川をはさんで内郷~平の市街が広がる。空のカーテンは絹のように薄い。後ろの山並みがかすかに見える。ホームセンターで買い物をすませると、雨がぱらつきだした。天気雨だった。

「汽車に乗って/あいるらんどのやうな田舎へ行かう/日が照りながら雨のふる/あいるらんどのやうな田舎へ行かう」。こんなときには決まって丸山薫の詩句が思い浮かぶ。

あとで知ったのだが、山里の三和では雪、平市街では昼にみぞれ(夕方のテレビでは「雪あられ」といっていた)が降った。神谷に戻ってからは家にこもっていたのでわからなかったが、夕方、外へ出ると、地面がずいぶん濡れている。結構な量の雨かみぞれが降ったようだ。

 昔から神谷で暮らしている人たちは、西の山並みを見て天気を測る。曇天で山がかすんでいるとやがて雨になる、雨が降っていても西の山の稜線が見えると、やがてやむ――。このごろは土地の人の“経験知”にならって、気象台の予報と、西の山のかすみ具合を重ねて、天気を測るようになった。今度の天気雨も、一過性のようだった。

 きのうは気温も上がらなかった。「光の春」と「寒さの冬」でいえば、「寒さの冬」が勝った。しかし、ホームセンターの帰りに夏井川の堤防を通ると、新川が合流する平・塩地内にはハクチョウが2羽しかいなかった。夕方に見ても数は少ない。だいぶ北へ渡り始めたようだ。
台風19号の大水でなぎ倒され、枝にいっぱいごみを付けた岸辺のヤナギも、うっすら緑をまとい始めた=写真上。光の春と寒さの冬の綱引きを続けながら、季節は春に向かって進んでいく。

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