「3・11」から10年目に入った。震災に伴う原発事故は、いまだに根本的な原因究明がなされていない。メルトダウンした原子炉は冷温停止状態にある。とはいえ、汚染処理水がタンクにたまり続けている。それをどうするかが当面の大問題のようだ。
怒り狂った魔物が何の偶然か急におとなしくなった、いつ暴れだすかわからない――そんなイメージで事故を起こした東電福島第一原発をみている。この9年間、車のガソリンが半分になると、すぐ満タンにしてきたのはそのためだ。
そこへ今度は、新型コロナウイルスの感染問題が起きた。東日本大震災と原発事故は、東京からはローカルな問題にしか見えないだろうが、コロナは全国的、特に人口密集地にとっては深刻な問題だ。
学校が休みになる。イベントが中止になる。社会全体が自粛・停滞で回らなくなり、福島県内ではコロナで倒産する企業が出始めた。
そうしたなかで、警察庁がパチンコ業界に広告宣伝の自粛を指導したというニュースが流れた。いつとはなしに「パチンコ店はクルーズ船と同じではないか」という懸念がネットを駆け巡るようになった。そうした声を受けての指導だろう。
実は毎朝、パチンコ店の新聞折込チラシ=写真=の有無をチェックしている。パチンコ店のチラシは例外なくA3の大きさだ。ある大手チェーンを除いて片面刷りだから、裏側は落書きやメモ用紙になる。
義弟が通っているデイケア施設では、ケアのひとつとして落書きを取り入れているらしい。白い紙はいくらあっても足りない。以前は、同じ新聞折込の「お悔やみ情報」(A4判、片面コピー)を持たせていたが、これは「遠慮したい」ということになって、パチンコ店のチラシに切り替えた。
コロナ騒動が起きてからもチラシの数は減らなかった。自粛・自粛で時間を持て余した人間が店に来ると踏んだかどうかはわからない。それが、きのう(3月10日)はなかった。けさもなかった。指導が効いたようだ。
震災前に哲学者の内山節さんが『怯えの時代』(新潮選書、2009年)という本を出した。
「今日の人々は、巨大な悪がしのびよってきているような感覚に怯えている気がする。自分の生活や労働がこわれていくのではないかという怯えがあり、社会全体にも次々に混乱要因が現われてくるのではないかという不安がある。なぜそれが怯えなのかといえば、悪の正体がつかみえないからである」
まさに今、「混乱要因」が次々に現れている状況だ。「怯え」の日々を私たちは生きている。原発事故以来、「見えない不安」がずっと続いている。
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