強風のあとに夏井川渓谷の隠居へ出かけると、決まって庭に木の枝が散乱している。先日はアラゲキクラゲの幼菌の付いた枝が落ちていた=写真上。木の名前がわからない。アラゲキクラゲの発生する木が庭にある。それかと思うのだが、いくら見上げてもはっきりしない。結局、どこからか飛んで来たのだろう――で終わる。
平地では、四倉町の旧道(江戸時代の浜街道)に残る3本のクロマツ(樹高およそ19メートル、幹回り2メートル強)のうち、商店街寄りの1本の上半分がなくなっていた=写真下。事情を知る地元の知人によると、強風で倒れそうになったため、電線や周囲の家、住民に被害が出るのを恐れて、所有者が東北電力に連絡して切ってもらったそうだ。
そばに「保存樹木」の標識がある。このクロマツは約300年前、平藩主内藤氏の時代に植えられた、「浜街道」の並木で、間隔が短いのは苗木のときに植えられたまま今日に至ったことを示す、歴史的記念物である――といったことが書かれてある。
人間が自然を収奪し、快適で便利な暮らしを追い求めた結果、地球温暖化が加速して風と雨のエネルギーを増大させ、風水害が多発するようになった。四倉の人々にとっては何代にもわたってそこにあるランドマーク、「街道の三本松」が「二本松」になった、というだけでも寂しさが募る。しかし、根は生きている。切られた幹から新しい枝が生えてくる可能性がないわけではないだろう。
アラゲキクラゲの付いた木の枝は、家に持ち帰って水を入れた花瓶に差した。2日もたつとしぼんで形がよくわからない。“栽培”の夢は消えた。何年か前にも同じことをして、同じように失敗した。
アラゲがだめなら、次は春のキノコのアミガサタケ――。フェイスブックに上がった情報では、列島の西の方でアミガサタケが発生している。渓谷の隠居の庭にシダレザクラが2本ある。結構な大きさになった。樹下にアミガサタケが出る。去年(2019年)の師走、樹下をイノシシがほじくり返した。菌糸が無事なら4月には現れる。
クロマツも、アミガサタケもしぶとく生きていてくれよ――。今は祈るような気持ちでいる。
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