この日、「3・11」に合わせて、首都圏に住むカミサンの学生時代の親友(仙台出身)から宅配便が届いた。「柚餅(ゆうもち)」「花つどい」「京観世」に、あさり・きゃらぶきの「白佃煮」が入っていた=写真
さっそく「柚餅」をいただく。直径2センチほどの丸い餅で、つまむと軟らかい。控えめな甘みとほのかな柚の香り。甘党でなくても、もう1個、もう1個と手が伸びる。これが、洗練されて上品な京の食文化というものか――。
ネットで確かめたら、「京観世」は渦巻き型の餡、「花つどい」は羊かんだ。これはきょうあたり、お茶と一緒に出てくるのではないか。
去年(2019年)は、3月11日付の消印で手紙が届き、川崎の焼菓子が別送されてきた。そのときの拙ブログ。「焼菓子は、いわきでは食べたことのない食感だった。口に入れると、ほろりととろける。甘さも控えめだ」。2、3日は紅茶と焼菓子が、3・11でざわついていた気持ちを鎮めてくれた。
今年の手紙には、新型コロナウイルスへのとまどいがつづられていた。2月のご主人の誕生日に、子どもたちからマスクと消毒液が贈られた。そして、「外に出るな!」の一点張りだという。「都会にいると想像以上に神経質となっており、時に『放っておいてくれ』と叫びたくなる」とあった。
そうしたなかで迎えた10年目の3・11だった。朝起きるとすぐ海に向かって合掌した。午後はたまたま2時過ぎからテレビを付けっぱなしにしていた。2時46分、生中継に合わせて黙祷する。そのあと、自分のブログで東北地方太平洋沖地震が発生した直後の様子を振り返った。
この9年間だけでも、全国各地で大きな災害が起きている。地震、台風、そして新型コロナウイルス感染……。見えない不安が続くときほど、小さな楽しみを見つけて気持ちを切り替える。庭のスイセン、白鳥、雲、テレビ、本、カツオの刺し身、晩酌、その他なんでもいい。和菓子には「楽しみ」のほかに、「寄り添う」という格別の味がしみていた。
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