いわき民報に月1回、画家の冨田武子さんが「いのちを描く――ボタニカルアートの世界」と題して、絵と文章を寄稿している。私もその隣で、「あぶくま、星の降る庭」と題して、写真付きで文章を書いている。
「あぶくま――」は2013年3月に始まった。虫をテーマに連載していた知人が急に入院した。短期のピンチヒッターだったのが、そのまま今に至っている。知人は間もなく回復し、同紙の別の欄で連載を再開した。
冨田さんはいわきキノコ同好会の会長、私は発足時からの会員ということで副会長を務めている。この7年近く、隣り合わせの連載で注意してきたのは、テーマがダブらないようにすることだった。季節に合わせてキノコのことを書いたら、冨田さんも同じキノコを取り上げていた――では目も当てられない。
そんな縁もあって、先日(11月8日)、いわき市泉町のアートスペース泉で開かれている冨田さんの「ボタニカルアート展」を見てきた(11月24日まで)=写真上1。
いわき民報に載った植物やキノコは印刷の制約もあってモノクロだが、原画は鮮やかなカラーだ。植物の花やキノコが精密なタッチで描かれている。同時期に咲く野の花とキノコを組み合わせた作品には、冨田さんの自然環境への思いがこもっている。なかに、毒キノコのオオシロカラカサタケの作品があった。「キノコでは、それが一番新しい作品」と冨田さん。
オオシロカラカサタケはほかの南方系のキノコ同様、温暖化の影響で北上中らしい。日本では関西を中心に分布し、いわき市内ではハウス内での発生は確認されていたが、野外では未確認だったという。
食毒を越えてキノコの生態を調査・研究する、人命にかかわる毒キノコだからこそ、詳しい調査・研究・広報が必要、細密画もその一環――と理解すると、冨田さんの作品がより身近なものになる。
会場には「いのちを描く――」の一部(新聞コピー)と、日本産トリュフ(ホンセイヨウショウロ)の発見を伝えるいわき民報(2018年7月10日付)も展示されていた。いずれもいわきの山野に息づく“隣人”たちだ。
拙ブログで何度も書いているが、人間は自然にはたらきかけ、自然の恵みを受けながら暮らしている。ときには大きなしっぺ返しを受けるとしても、自然をなだめ,畏(おそ)れ、敬いながら、折り合いをつけてきた。その関係を原発事故が断ち切った。
私の「あぶくま、星の降る庭」も、放射性物質で汚染されたふるさと・阿武隈高地の人間と動植物たちの屈する思いを伝えるのが目的だ。森のキノコは今も摂取がかなわない。
ボタニカルアートやネイチャーライティングを通して、自然と人間の関係に思いをはせる人が1人でも2人でも増えれば、と思う。
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