3連休最後の月曜日、11月23日・勤労感謝の日は、アリオス4階小劇場で朗読劇(1部)とメモリアルコンサート(2部)を聴いた。1部と2部をつなぐのは詩人草野天平(草野心平の弟)。1部は「天平と梅乃~二人で歩いたひとつの道」、2部は川内村の陶芸家「志賀敏広さんを偲(しの)んで」だった。
志賀さんは天平に引かれ、今年(2020年)2月21日~3月8日、いわき市小川町の心平生家で「書画でめぐる草野天平の詩」展を開催した。その準備をしていた2月初旬に体調を崩し、同26日、71歳で亡くなった。危篤の志賀さんに代わって、奥方の志津さんが作品を搬入した。
メモリアルコンサートへは、志賀さんの娘さんから連絡がきて、夫婦で出かけた。志賀さんはことのほか邦楽を好んだ。下川内の自宅敷地内にはいわきから移築した古民家がある。そこでのコンサートでも尺八や琵琶、筝の演奏が行われた。メモリアルコンサートでは、川内のコンサートでもなじみの琵琶、尺八奏者などが出演し、歌手が「アヴェ・マリア」や「涙そうそう」などを披露した。
3月2日の葬儀・告別式では、正面を向いた遺影ではなく、菜の花畑の小道で、そばに立つ高木を見上げている横向きの写真が飾られた。場所は南相馬市、海岸の菜の花迷路と聞いた。今度もステージにその姿が大写しにされた=写真。
コンサートのリーフレットで、出演者が志賀さんとの思い出を語っている。ピアノの吉田佐由子さん「2015年5月に川内村を初めて訪れた日のことが昨日のように思い出されます」。演出・朗読の松田光輝さん「愛すべき『陸(ろく)でなし』天平と梅乃そして志賀さん」。
琵琶の博多龍声さん「いつもニコニコと人懐っこい笑顔と穏やかな人柄で会う人全てに優しさを呼び与えてくれました」。尺八の橘梁盟さん「毎年夏には、こだわりのいっぱい詰まったアンティークなお宅にお伺いし、尺八を吹きながら美味しいお酒をたくさんいただきました」。
歌手のAnnさんは「何が本当に美しく、何が本当に大切かを自然と共に見つめてきた人。志賀さんを思い出すと、そんな言葉と川内村の風景が一緒に浮かんできます」とつづった。
1部では、ステージ中央に志賀さんがつくったロッキングチェアと長いすが置かれた。朗読劇の重要な道具として確かな存在感を放っていた。
彼が亡くなったときに、ブログにも書いたことだが――。志賀さんは日常の中で死と向き合い、人にそれと気づかれることなく、おおらかに生を楽しんだ。川内の自然をこよなく愛し、自然とともに暮らすことを喜びとして、自然に溶け込むようにして永遠の眠りに就いた。
それと、もう一つ。これは胸の中に生きている死者がもたらした感覚の波動というべきか。コンサートの途中から、ステージに大写しにされた彼がこちら側に来て、みんなと一緒にステージの演奏を楽しんでいる――そんな気持ちになった。
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