2021年2月3日水曜日

河川敷のヤマザクラ

                     
「定線観測」をしていると、いつのまにか感情が移って気になるモノが増える。夏井川の平・鎌田~中神谷地内と対岸の堤防沿いでいうと――

河川敷に一本しかないヤマザクラがある。夕方、カラスがねぐらへ帰るときの休み場(ヤナギの大木)がある。てっぺんでカッコウが歌っていた屋敷林(ケヤキやスダジイ)がある。初夏、オオヨシキリが盛んにさえずる岸辺のヤナギの若木とヨシ原がある。

これらはパッと思い浮かべただけだが、細かく見ていけば、河川敷から堤防の内側(人間の住む地域)に移された小祠(しょうし)や四季咲き桜、なぜ堤外の高水敷にあるのかわからないミカンの木、墓地内にある戊辰戦争の記念碑など、風景は気になるモノであふれている

おととし(2019年)の台風19号が平・平窪地区を中心に甚大な被害をもたらした。再び人命と財産が失われないようにと、河川敷の除草・伐採・土砂除去が行われている。これはそのために消えるモノたちの「記録」でもある。

国道6号(旧バイパス)の夏井川橋をはさんだ左岸河川敷に、あるとき、ソメイヨシノの苗木が植えられた。根づいたのはいいが、年に2~3回は大水が出て水没する。水が引くと、木の枝などの漂着ごみをまとう。そのうち、根が浮いたり、幹が折れたりして、花を咲かせるどころではなくなった。

いつも痛々しい姿をさらしていたが、今回、とうとう中神谷の分(夏井川橋の上流、除草・伐採が行われたエリア)が除去された。

上流・鎌田には冒頭に紹介した立派なヤマザクラとヤナギがある。いや、あった。これらも先日、伐採された=写真。近くの畑にも重機が入った。

河川敷の畑については、12年ほど前、対岸の山崎で河川改修・拡幅工事が行われたとき、手つかずのまま残ったものがあるので、なぜそうなのか探ったことがある。

三つのケースがあるようだ。一つは民有地。所有者が畑として利用している。二つ目は河川管理者が許可した場合。なにかあればすぐ返さないといけない。三つ目は、届けを忘れている場合。いずれにしても人間の手が入るので、そこだけ草木の繁殖は抑えられるという面はある。

ヤマザクラは自生だろうか、だれかが植えたのだろうか。花が先に咲くソメイヨシノと違って、葉と花が同時に開く。地味だが、咲き始めにほんのり赤らむようなたたずまいのヤマザクラが私は好きだ。街場にあって、それなりに生長したこの木は、特に“気になるモノ”だった。

対岸の屋敷林(北白土)のケヤキについてはこんな記憶がある。初夏、夏井川の右岸から「カッコー、カッコー」という鳴き声がよく聞こえてきた。夏井川の堤防へ出て、声を頼りに双眼鏡で姿を探すと、たいていは岸辺の大木のてっぺんで鳴いていた。

わが生活圏でいえば、北白土(屋敷林のケヤキ)、山崎、上・下大越のどちらか、3~4カ所にオスが飛来した。それが途切れたのは、夏井川の「ふるさとの川モデル事業」(平・鎌田~河口)のあとだ。

岸辺のヨシ原が刈り払われ、ヨシに営巣する夏鳥のオオヨシキリが姿を消した(今は復活した)。すると、その巣に托卵するカッコウも姿を消した。以来、カッコウに限っていえば「沈黙の夏」が続いている。

今年(2021年)はオオヨシキリが渡って来ても、ソングポスト(止まって縄張りを告げる木)はない。ヨシ原も復活するかどうかはわからない。人間の命にかかわることとはいえ、水辺の鳥には厳しい環境になる。

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