1年前にこんなことを書いていた(抜粋)――。玄関の履物がときどき、きれいに外向きになる。カミサンがそうする。革靴やスニーカーは、上がりかまち、といっても茶の間の疊だが、そこに座って履くから外向きの方がいい。
サンダルはどうか。新聞を取り込む。コンビニに行く。庭に出る。しょっちゅう家を出たり入ったりするので、向きはおろそかにできない。若いときは外向きでも内向きでもかまわなかった。最近は外を向いていると、段差が気になってしかたがない。
外を向いたサンダルに合わせて足を下ろす。もう一方の足がぐらつきそうになる。畳と玄関のたたきまでの段差を測ったら、約33センチ(1尺)あった。古希を過ぎた人間にはなかなか手強い高さだ。
玄関の靴やサンダルがそろって外を向いている分には、見た目はきれいで気持ちがいい。しかし、足を上げ下ろしするのがきつくなった人間には、ちょっと困る。ある日、宣言した。「サンダルは内向きのままでいいから」
外から戻り、サンダルを脱いで上がる。サンダルは内向きのままだ。外へ出るときは、後ろ向きになって玄関の柱につかまって足を下ろす。その方が、流れがスムーズだ。腰を痛めて、こたつから立ち上がるのが難しいようなときには、なおさら柱を支えにしないと、足を下ろせない。
隣の家にカミサンの弟が住む。やはり古希を迎えた。義弟は私より背が低い。朝・昼・晩と、わが家で食事をする。日に3回、玄関から茶の間へ上がるのに難儀している。
今年(2021年)の正月にも玄関にからんでこんなことを書いた(やはり抜粋)――。家の中での転倒事故を防ぐこと、これが「年頭の誓い」だ。老化で弱くなった足腰が、コロナ禍の巣ごもりでさらに弱くなった。するとますます、家の中にあるモノたちが「障害物」になる。
正月三が日、さっそく階段で足をぶつけ、座布団でこけそうになった。「家庭内事故」を減らすために、玄関のたたきにブロックを並べ、マットを敷いて踏み台にした。上がり下りがスムーズになった。デイサービスに通っている義弟は「ヨイショ」といわなくなった。
それから2カ月が過ぎようとしている今――。カミサンが玄関を掃除したあと、スニーカーとサンダルをきちんと外向きにした。これが困る。理由は上に記した通りで、サンダルをはいて新聞を取ろうとすると、踏み台に下りてからひとつよけいな動作をしないといけない。
サンダルが内向きで斜めになっていると簡単に足を入れられる。そのままカギをはずして玄関の戸を開ける。腕を伸ばして新聞を取り、すぐ引っ込む。ところが、きちんとサンダルが外を向いていると、まずそれに体の向きを合わせないといけない。そのあと、斜めに向きを変えて玄関を開ける。ささいなことかもしれない。が、毎日のルーティンになるとストレスがたまる。
わきの棚に並ぶ靴も、靴屋のように爪先がこちらを向いている。靴屋のディスプレイとしては見た目もすっきりしてきれいだ。が、実際手に取って履こうとすると、一度向きを変えないといけない。
学校の下駄箱を思い出せばわかることだ。靴を脱いだら、爪先から奥に入れたはずだ。かかとが前だと取り出しやすいし、スムーズに履くことができる。玄関の棚に置かれた自分のスニーカーの向きを変えて、かかとを前にした=写真。玄関の履物は、年寄りには後ろ向きで少し乱雑なくらいがいい。
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