プラム、高田梅、カリン。夏井川渓谷の隠居の庭に植えた実の生(な)る木だ。プラムは早い段階でキノコのカワラタケの仲間にやられ、高田梅も剪定を続けているうちに、一部、カワラタケの仲間が生えてきた。
カリンだけは元気で、秋になるといっぱい実=写真=をつける。今年(2021年)はリンゴのように大きくなったものもある。
カリンはかりん酒か砂糖漬けにするといいらしい。生のままでは硬くて食べられない。で、実が生ってもそのままにしてきた。
今年は、カミサンが隠居へ行くたびに収穫している。喜んでもらう人がいる。かりん酒とジャムにするのだという。
すると、これは自然からのお福分けのリレーだ。使ったものをあげるわけではない。原材料の提供で、かりん酒になって戻ってくればサイクルになる?――なんてことを考えたのは、テレビで「アップサイクル」という言葉を知ったからだ。
リサイクルという言葉には、それこそ何十年も前からなじんでいる。その延長でアップサイクルがある。ダウンサイクルもあるという。
土曜日(10月30日)の夜、BSプレミアムが生中継で「恋しいパリ」を放送した。私は途中で寝てしまったが、「あとでキノコも出てきた」とカミサンがいう。
パリに住む日本の元女子アナ3人(NHK出身1人、民放出身2人。いずれも中高年世代なら「ああ」となる人気アナだった)が、あれこれ「パリの今」を伝える。そのなかでアップサイクルの事例が紹介された。
一夜明けても、頭にアップサイクルが残っていた。リサイクルを古い概念のままにしておくわけにはいかない。ネットで検索を続けた。
歴史のある古い建物に新しいものを取り入れて存続させる、年代物の洋服を生かして別の物をつくる――いろんなアップサイクルがある。いわゆる「蔵カフェ」、あるいは日本の伝統的な「裂き織り」。これなどはアップサイクルの事例に入るらしい。
ダウンサイクルの説明にはちょっと首をかしげた。Tシャツを雑巾に、新聞紙を再生紙にする――そういったことが事例として挙げられている。
雑巾・再生紙はTシャツ・新聞紙よりは価値が下がり、いずれゴミになる。だから、ダウンサイクル? アップサイクルだっていずれはゴミになるだろう。捨てずに使い切るという視点でいえば、否定されるものではないはずだが。
ポイントは、リサイクルするのに「原料」に戻したり、「素材」に分解したりするためのエネルギー使用がないこと、そのへんらしい。
そのままの形をなるべく生かす、地球への負荷を抑える、そういう方向でのリサイクルへアップグレード(質の向上)すること――となれば、SDGs(持続可能な開発目標)とも連動する。
カリンの実を眺めながら、アップサイクルを、ダウンサイクルを考えるとは思いもしなかった。カリンは甘い香りが特徴だという。一度はかりん酒を飲んでみたい気もするが……。
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