2021年11月3日水曜日

飛べるようになったとか

                     
 11月に入るとすぐ、小川町のSさん(白鳥おばさん)から電話があった。残留コハクチョウの「エレン」=写真=が飛べるようになったという。声をかけると、仲間と一緒に飛んで来る。「来春はみんなと北極圏へ戻れるんじゃないかな」。うれしい知らせだった。

 小川町では三島地内の夏井川でハクチョウが越冬し、3月になると北へ帰る。ところが、今年(2021年)は1羽がけがをして残留した。それに気づいたのは3月27日の土曜日早朝だった。

 朝めし前の土いじりをしに、夏井川渓谷の隠居へ出かけた。途中、三島で道路と夏井川が並走する。川のカーブを利用した小川江筋の取水堰(ぜき)がある。その上流がハクチョウの越冬地だ。そこに1羽、ハクチョウがいた。右の翼が少しおかしかった。

1週間後もいれば、けがをして飛べなくなったコハクチョウだということがはっきりする。4月4日の日曜日朝、隠居へ行く途中に見ると、やはりいた。間違いない、けがをして残留したのだ。

地元のSさんが毎朝夕、えさ(玄米)をやる。それを知ったのは6月中旬。隠居へ行く途中、Sさんがいたので話すと、ハクチョウに「エレン」という名前を付けていた。

いわき民報にブログと連動したコラム「夕刊発磐城蘭土紀行」を連載している。「夕刊発――」にもエレンの話が載った。その新聞をSさんが見た。

8月18日早朝。隠居へ出かけてキュウリを摘んだ帰りの7時過ぎ、エレンのいる三島に着くとSさんがいた。目が合った瞬間に「吉田さん?」。以来、「エレン」を仲立ちに、つながりができた。

 「三島にハクチョウが現れた」。10月10日にもSさんから電話があった。翌日、隠居へ行く途中、飛来した仲間と一緒にいるところを写真に撮った。さらに、10月25日は朝、三島で3羽(うち1羽は残留コハクの「エレン」)を確認した。

 そして、11月1日。冒頭のような電話が入った。Sさんは、自分のほかに、道路のそばに住むMさんもえづけをしていることを教えてくれた。Mさんとは、2013年11月下旬、エサをやっているときに出会って、少し話した

そのときのブログの抜粋。――朝8時過ぎ。コハクチョウがひしめいていた。そばを走る国道399号から水面までは、5メートルはあろうか。Mさんがガードレールのそばから「おはよう、おはよう」とハクチョウたちに大声で呼びかけながら、えさのクズ米をまいていた。

朝晩の2回、彼らにえさをやっているのだという。クズ米はだれかがえさ置場に持ってきてくれる。以前は右岸でえさを与えていたが、砂にまみれて食べづらそうだったため、左岸擁壁の上からまくようにしたという――。

 SさんやMさんのような人がエレンを見守ってきた。何十羽も飛来するようになった今は、「エサが足りない」(Sさん)くらいだという。なにはともあれ、よかった、よかった。

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